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日本仮想化技術のCEO宮原氏に聞く
「第2ラウンドに入った日本の仮想化の現状とこれから」

半導体とネットワークを有機的に融合したIoTを提案、技術商社マクニカグループならではの取り組み

※日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 宮原 徹氏

2010年以降、多くの企業では仮想化環境を使ってビジネスを推進するようになってきました。では仮想化技術の活用のポイントは何でしょうか? そして今後どのように発展していくのでしょうか? 仮想化技術活用の現状と今後の展望について、仮想化に関する調査、コンサルティング、システム構築のサポートを提供している日本仮想化技術株式会社 代表取締役社長 兼 CEOである宮原 徹氏にお話を伺いました。

仮想化技術浸透には、知識の「広がり」と「深まり」が必要

日本オラクル出身の宮原氏は、2001年にIT技術者の人材育成企業 株式会社びぎねっとを設立。その後、日本国内に仮想化のスキルを持った技術者を育成する環境ができていないことを問題視し、2006年に日本仮想化技術株式会社を設立しました。同社は現在、仮想化技術に特化した専門エンジニアを抱え、仮想化を検討している企業や事業者に対して、戦略立案から設計、導入、運用保守に至るトータルサポートを提供しています。

宮原 徹氏

同社の設立理由には、始まったばかりの仮想化技術を普及させようという宮原氏の思いが込められていました。
「設立した2006年当時、実績のない仮想化の本格的な導入は躊躇われていた状況でしたが、私はいずれ普及するものと期待していました。それには専門的な技術者が必要なのに、日本国内には彼らを育成する土壌がありません。それでは、企業が本格的な活用を検討し始めたときに、困るはず。そこで、仮想化に取り組もうとした企業に頼られる専門技術者を育てたいという思いから日本仮想化技術を設立しました。」

新しい技術を理解するには、「広がり」と「深まり」が必要と宮原氏は指摘します。広がりとは「多くの人が新技術を活用するメリットを理解すること」であり、深まりとは「高い品質を追求するときに必要となる専門家としてのスキル」を意味します。多くの人に仮想化のメリットを伝え、それを活用するための技術者を育てることが同社の役割と、宮原氏は捉えています。

日本仮想化技術という古風な印象を与える社名にも、宮原氏の思いが込められていました。「社名は昭和に作られた会社みたいでしょう。社名のロゴも、大正時代に使われていたフォントをイメージしています。これは歴史を感じさせることで『仮想化技術は信頼できる』と思っていただくためのアピールなんです。」

第2ラウンドに入った仮想化技術。「今の最適な仮想化環境」を模索する企業

同社は、設立してから9年になります。その間、仮想化をめぐる環境は大きく変わりました。しかし「仮想化に対する人々の意識の変化を大きく感じています。」と宮原氏は語ります。設立当時は、仮想化は検討されるものの、システム導入に至るケースはほとんどなく、実際に導入が増えてきたのは約5年前だそうです。

日本では5年ほど前から仮想化構築が本格化し、それ以降、仮想化技術に対する理解、ノウハウの蓄積が進みました。この普及期から今までの5年間が仮想化の第1ラウンドといえます。「第1ラウンドで仮想化に取り組んだ企業は、既存のオンプレミスの環境を、そのまま仮想化に移行するケースがほとんどでした。それは、物理サーバをそれぞれ個別に管理運用するサイロ状態を解決して、コストを削減したいという目的を持っていたからです。仮想化すればシステムを統合し、一元的に運用管理できます。これは、無理のないレベルでの仮想化移行でした。当時は未経験の仮想化に信頼を置くこともできなかったため、既存環境を仮想環境になるべくそのまま移行しようとしたわけです。」

しかし、5年に渡る第1ラウンドを経て、仮想化をめぐる環境は様変わりしました。当時は「VMware」が第1の選択肢とされていましたが、今では「Xen」や「Hyper-V」も同等の候補として挙げられます。サーバ、ストレージなどの機器、ネットワークも、さまざまな技術が成熟し、さまざまな選択肢から採用できるようになっています。オープンソースのクラウド構築技術「OpenStack」、「Docker」を始めとするコンテナ型仮想化技術など、新しい技術も注目されています。

宮原 徹氏

「多くの企業では、5年程度のサイクルでシステムをリプレースします。つまり、最初に仮想化に取り組んだ企業は、そろそろシステム更新の時期を迎えようとしています。今、まさに仮想化の第2ラウンドが始まったところです。」

企業は第1ラウンドでの経験を通して仮想化を理解しています。そのため、第1ラウンドのときよりも要求レベルが高くなっています。例えば、第1ラウンドの目的はシステムを統合化だけだったものが、第2ラウンドでは運用監視、バックアップまで含めてのシステム統合を仮想化で実現しようとしているのです。

「5年前に比べて、ハイパーバイザー製品の基礎技術は成熟化が進み、周辺ソリューション、仮想アプライアンスなども充実してきました。企業にとっては選択肢が増えてきたことになります。だからこそ、これからの自社のビジネスに貢献できる、最適な仮想環境は何かを模索しながら、次のリプレースを検討しています。」

最適な仮想化環境のヒントはどこにある? 情シスは非IT部門との連携を

企業にとって最適な仮想化環境、そのために必要となる仮想化技術を検討するにあたって、宮原氏は「非IT部門との連携がヒントになります。」といいます。そして「まず実現したい夢があり、それを実現するための技術がある。その夢を持っているのは、ビジネス現場にいる非IT部門でしょう。」いう持論を語りました。

宮原 徹氏

「今、仮想化業界では、さまざまな新しい技術が登場してきています。しかしすべての最新技術をフォローするのは難しいことです。どの技術を会社で導入するか検討する際、非IT部門とコンタクトを取ることをおすすめします。実際のビジネス現場で活躍している部門がやろうとしていることを理解し、それを実現するために必要なIT技術を提案する。その視点を持って、新しい仮想化技術を検討すればいいのです。」

非IT部門とコンタクトを取る際には、他社の導入事例も役立ちます。仮想化がわずか数年でこれだけ普及したのも、先行して採用した企業の事例を見てメリットを感じた他社が後を追うことが続いたからです。それらの先行事例からさまざまなノウハウを読み取り、非IT部門の取り組みにマッチした技術をピックアップするのも、情報システム部門の重要な役割といえます。

ビジネスニーズを満たすエンタープライズクラウド環境構築

最近の仮想化業界では、オンプレミスのプライベートクラウドとパブリッククラウドを接続するハイブリッドクラウドのニーズが高まっている傾向が見られます。

「ハイブリッドクラウドが向いているかどうかは、業界、業態によって違ってきます。例えば、日々の決まった作業はプライベートクラウドで処理し、それとは異なる作業が必要になったときに高速なパブリッククラウドにすぐに仮想環境を作って、短時間で処理を完了させるといった使い分けが可能なら、ハイブリッドクラウドのメリットを引き出せるでしょう。 ハイブリッドクラウドは、プライベートとパブリックの2つのシステムを管理運用する負担が増えます。しかし、2つのシステムを持つメリットを見いだせれば、その技術を取り入れる意味が生まれます。」

ハイブリッドクラウドは、行き過ぎたパブリッククラウド移行の揺り戻しでもあります。パブリッククラウドが高く注目されたとき、多くのシステムやデータをパブリックに置く企業も現れました。いわゆる「持たない経営」「持たないIT」です。しかし、利用の際のデータ転送量が増えすぎて、逆にコスト高になってしまってケースもあります。その点、ハイブリッドクラウドは使い分けのメリットを見いだせれば、適切に利用できます。

ただ、パブリッククラウドを利用する場合は、技術以外の問題も解決しなくてはいけません。パブリッククラウドを利用することは、社内のデータを外部に出すことになります。ところが会社のコンプライアンス、セキュリティポリシー、監査の点から、それが禁じられている場合もあります。

「パブリッククラウド事業者へ、監査に必要な資料を要求しても、セキュリティの観点から提供できないと断られることもあります。そうなると、技術的に可能であっても、活用できなくなります。
そこに象徴されるように、クラウド、仮想化を積極的に活用していくには、ビジネスのプロセスやフィロソフィーを抜本的に見直すことも重要になるのです。そのためには、クラウドや仮想化に対するIT投資が、どれだけ経営に貢献できるかを、具体的に示す必要があるでしょう。」

失敗を避ける秘訣は、ハードウェアとビジネスプロセス

多くの企業における仮想化事例をつぶさに見てきた宮原氏が、失敗を避けるポイントとして、最初に挙げたのは意外にも「ハードウェアを知ること」でした。仮想化に移行しても、パフォーマンスが出ないケースがあります。その要因のひとつに、機能要件だけを意識してシステム構築した結果、パフォーマンスを劣化させるハードウェアの条件に目が届かなかったことを挙げています。

「仮想化に取り組むとハードウェアに目が行かないケースが多いようです。例えば大規模なデータベースやメールサーバは高速ストレージが必要ですし、ログイン認証サーバは出社の時間帯に負荷が高まります。ファイルサーバはCPU負荷が低くても、高速化するにはメモリ量やストレージのキャッシュ容量が効果を発揮します。そのように用途に合わせて最適なハードウェア構成を用意しないとパフォーマンスが発揮されません。一律にサーバスペックを設定してもパフォーマンスが出ないだけでなく、投資コストのムダにもなります。」

宮原 徹氏

宮原氏が挙げたもうひとつのポイントは「予算確保も含めた柔軟な設計」でした。
「日本の企業の構築するシステムは、細部まで決め込む設計がほとんど。しかし仮想化の利点は、構築後も柔軟な変更が可能なことです。コンパクトな構成でスモールスタートをして、後からニーズや環境の変化に合わせて柔軟に対応できるようにしておく。いわば、ふんわりとした設計です。」

例として挙げられたのが、インターネットでサービスを提供するWebサービスでした。Webサービスは、アクセスが増えればパフォーマンスは落ちるものです。しかし構築段階で将来の利用率を正確につかむのは困難です。アクセスの増減に応じて変更できるようにするほうが、仮想化の利点を活かせます。

「ふんわりとした設計をする際に問題になるのは、システム上の制約ではなく、実は予算です。日本企業では後からの予算追加が困難なことが多く、そのためきっちりとした設計が求められてきました。自由度の高い仮想化を推進するには、ビジネスプロセスから見直す必要があります。」

コンテナ、ハイパーコンバージド・インフラストラクチャー……。今後期待される仮想化技術

宮原氏が現在もっとも注目している新しい技術はコンテナだといいます。コンテナは、普及しているハイパーバイザー型とは異なる仮想化技術で、仮想マシンを作らないためCPUやメモリ、ストレージなどを個別に割り当てる必要がなくリソースを抑えられます、そしてハイパーバイザー型よりも新規環境を容易に作れる俊敏性を持っています。

宮原 徹氏

「コンテナはまだこれからの技術で、何に適しているかどうかが、理解できていない人が多いのではないでしょうか? 私は、Webサービスやスマホアプリに向いていると考えています。それらはサービスが画一的で、アクセスの上下変動が激しいものです。アクセスが急増したら、迅速に環境を整えて、対応するスピードが求められるものには、コンテナが向いています。
また学校のような教育機関にも向いているでしょう。授業でPCを使った後、初期環境に戻す必要があります。画一的でクリーンなPC環境を維持するにはコンテナが役立ちます。
逆に向いていないのは、業務システムのようなもの。一度作ったら、簡単には変えません。そして決められた処理を行うので、アクセスの変動も大きくはありません。そういうものは、コンテナの俊敏性が活きないでしょう。」

これからの仮想環境構築にあたっては、「Nutanix」をはじめとするハイパーコンバージド・インフラストラクチャーも見逃せません。これは、サーバとストレージを物理的に統合し、柔軟性、拡張性を高めた仮想化基盤向けのアプライアンスです。
「コンバージド・インフラストラクチャー(垂直統合システム)は、『仮想化の鉄板プラン』を提案したものといえます。それをさらに進めたものがハイパーコンバージド・インフラストラクチャーです。特に扱われるデータ量の変動が少ない、安定したシステムを構築するのに向いているでしょう。」

このように仮想化業界では次々に新技術が登場しています。宮原氏は、「仮想化導入は第2ラウンドに入りました。経営視点、非IT部門の動向などを踏まえて、本当に自社のビジネスに必要な技術は何かを判断し、新しい仮想化技術を用いて、これまで以上にビジネスに貢献していくことが求められます。」と、これからの仮想化技術活用について展望を語りました。

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