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マクニカネットワークスが取り扱う製品で、皆様の課題を解決します

GitHub,Inc.共同創業者Scott Chacon氏が語る、利用者970万ユーザまでの軌跡と成長のヒ・ミ・ツ

Build software better, together. オープンソースに関わっていくことはソフトウェアを学ぶためのすばらしい方法である。GitHub, Inc.共同創業者Scott Chacon氏

世界で約970万のユーザを擁し、デベロッパーやエンジニアに絶大的な人気と信頼を得ているソフトウェア開発共有ウェブサービス「GitHub(ギットハブ)」を提供するGitHub, Inc.は、世界初の海外支社として日本支社「ギットハブ・ジャパン合同会社」を設立しました。それに合わせ、日本市場でオンプレミス版の「GitHub Enterprise」を普及・展開するため、マクニカネットワークスと国内総代理店契約を締結し、日本語による法人向け導入サポートと日本円による決済を開始しました。この提携により、急増を続ける日本国内ユーザや、日本のオープンソースコミュニティ、企業などとの関係をこれまで以上に深め、さらに迅速できめ細かいサービスやサポートを提供することが期待されています。

今回は、このほど来日したGitHub,Inc.共同創業者のScott Chacon氏に、日本市場での戦略や、オープンソースソフトウェア開発者の心構えなどを伺いました。

バージョン管理システムの標準をWebサービスとして提供するGitHub

Q:ソフトウェア開発プラットフォーム「GitHub」について教えてください。

A:まず「Git」とは、プログラムのソースコードなどの変更履歴を管理する分散型のバージョン管理システムのことで、Linuxの開発チームが開発し使用したことで、世界のソフトウェア開発技術者の間で有名になりました。

通常のバージョン管理システムはサーバ上に1つのリポジトリ(ソフトウェア開発や保守における各工程の情報を一元管理するデータベース)を配置して、利用者が共同で使用する方式が一般的ですが、Gitは開発者が自分の端末などのローカル環境に全ての変更履歴を含む完全なリポジトリをコピーして管理することができ、コード変更履歴を保存することが可能なため、変更内容の調整や整合性の維持が不要な上に、作業中は中央のサーバに常時接続している必要がないことが最大の特徴となります。その使い勝手の良さが認められ、最近ではバージョン管理システムのデファクトスタンダードになっています。

GitHubはそのGitを利用して世界中の開発者がソースコードの共有や公開、バージョン管理、レビュー、コラボレーションなどを可能にする無料の共有Webサービスとして2008年に公開されました。オープンソースでホスティングされていることから人気が出始め、企業の開発業務にも使いたいという希望が多くなったことから、指定したユーザのみアクセスができるプライベートリポジトリを有償サービスとしても提供しています。YouTubeのサービスのようなものと考えていただいていいでしょう。

2015年6月現在、970万ユーザ、2330万プロジェクトがGitHub上でリポジトリを展開し、その活用はソフトウェア開発者のみならず、ITエンジニアやWebでデザイナーなどにも広く拡大するなど、オープンソース製品の多くがGitHubをプロジェクトのホスト先に選んでいます。

Q:GitHub急成長のきっかけはなんでしょうか?

A:従来のバージョン管理システムとGitHubとの差がどれほど違うのかを、テクニカルなカンファレンスのデモストレーションで簡単に示すことができるようになったからです。それを見た人はGitを使ってみたい、トライしてみたいという気持ちがどんどん膨らみました。その時点になるとGitを使ったプロジェクトを見つけることができる唯一の手段がGitHubであり、その作業を共有できる唯一の場所もGitHubという状況になったのです。

まずは、RubyのコミュニティがGitHubを採用し、それに追随する形で他のオープンソースコミュニティもGitHubを使うようになっていったと思います。

GitHubの黎明期から多くの日本ユーザが利用

Q:オープンソース文化を加速させたのもGitHubだと言われています。

A:その理由は主に2つあると思っています。1つは、ユーザ体験を重視すること。私たちはソフトウェア開発をコマーシャルのプロジェクトとオープンソースのプロジェクトの両方に対して行ってきました。そのため、広告を収益源としなくても済んだ要因が大きいと思います。他のオープンソースソフトウェアは広告を収益源にしているものが多く、トラフィックが増えないと収益につながらないため、ユーザ体験を犠牲にしてもトラフィックを増やそうとします。しかし、私たちは有償版を提供しているため、使っていただけるユーザの体験を最も重視するサービスに集中することができました。

そしてもう1つは、良いツールを作ることを重視した点です。オープンソースのユーザはプロフェッショナルとしてツールを活用する方々が多いため、その方々が満足できる品質でなければ支持を得られません。GitHubも最初はシンプルな構成で、今と比べて機能も少ないものでしたが、早い段階から使い勝手の優れたものを目指し、シンプルでありながら無理に必要なものを削り落とすことはせず高度な機能を有するサービス構築を心がけてきました。その結果、他のツールからGitHubに移行して使っていきたいというユーザが増えたのだと思います。

Q:日本のユーザをどのように見ていましたか?

A:日本では早い段階から、多くの方にGitHubを使っていただいてきました。私は5年ほど前に初めて日本を訪問しましたが、当時のGitHubはまだ機能が簡素だったにも関わらず、多くの日本の開発者がご利用いただいている状況に驚いた記憶があります。その理由には、やはり日本は他の国とは違いオープンソース開発が盛んなお国柄であることが大きかったと思います。

事実、GitHubは日本で生まれたプログラミング言語「Ruby」のオープンソースプロジェクトで作られたRailsというフレームワークによって開発されており、日本のオープンソースコミュニティなしではGitHubは存在しえないといっては過言ではないほど、日本とGitHubは深いつながりがあるのです。Ruby開発者のまつもとゆきひろさんがRubyのカンファレンスでGitHubにRubyのコードが掲載されていることを紹介したこともあり、それがきっかけでRuby開発者の多くがGitHubに惹かれていったという経緯もあります。

また、2008年のGitHub設立当初から、日本からのgithub.comへのアクセス数は上位10ヶ国以内をキープし続け、おそらく英語圏以外でGitHubが最も早く盛んに活用された国も日本でした。それは現在も増加し続け、2014年には日本ユーザのGitHub上でのアクティビティは、前年比60%も増加しました。

世界中の大企業がオープンソースの活用を進めコミュニティへの寄与貢献を増加

Q:以前からGitHubと日本に深いつながりがあったことは嬉しいですね。そこで、Scottさんが考える、次世代を担う日本の若いプログラマーがオープンソースと向き合う上で重要なこととはなんでしょうか?

A:日本に限らず若いプログラマーに対して、私は常々オープンソースに関与してくことは重要なことだと伝えたいと思っています。それはなぜかというと、オープンソースに関わっていくことはソフトウェアを学ぶための素晴らしい方法であり、同じ関心を持つ人々との出会いは自身のスキルを磨く意味でも有効な手段になるからです。また、今後のビジネスにつなげるためには、若いプログラマーの作業に関心を持つ人々に対して自分の名前を知ってもらうということは非常に重要で、自分が学び育ててもらったコミュニティに還元していくこともまた大切なことだと考えます。

現在、世界中の大企業がオープンソースの活用を急速に進めており、オープンソースの開発プロジェクトやコミュニティに対して寄与貢献する機会もどんどん増やしています。オープンソースコミュニティに対しプロフェッショナルとしてどのように関わっていくのか、それを早い段階から学び、理解していくことが、将来的な仕事やプロジェクトのオペレーションに関わる上で大きく役に立つことになるでしょう。

Q:反対に、これはしない方がいいと感じていることもあれば教えてください。

A:私の個人的な意見で申し上げると、自分が情熱を持てないことはしないようにしています。市場が求めているからとか、仕方ないからで開発をするのではなく、コンピュータサイエンスにおけるすばらしく偉大なことができるから、よりイノベーティブに、よりクリエイティブにオープンソースに関心を持ち情熱を傾けられるのです。もちろん普段の仕事は重要ですが、仕事を離れて自分が関心を持てるプロジェクトを見つけ、それを手掛けていくことができるのもオープンソースだからこそだと思うのです。

マクニカネットワークスが国内総代理店としてGitHub Enterpriseを提供

Q:ところで、GitHub,Inc.はオープンソースプラットフォームのGitHub以外にも、それと同じ環境を組織内にクローズドで再現できるオンプレミス版の「GitHub Enterprise」を2012年から提供されています。そのGitHub Enterpriseを海外へ本格展開するにあたり、世界で最初に日本法人を設立し、マクニカネットワークスを日本の総代理店として選ばれました。その理由とはなんでしょうか? また期待することとはなんでしょうか?

A:先ほども触れましたように、これまで日本市場には十分なサポートネットワークもなく、日本語対応すらしていなかったにも関わらず、GitHubやGitHub Enterpriseが多くの有力企業にご採用されていたことに大変驚いています。ただ、優秀な国内パートナーが不在なために、日本のお客様にきちんとした対応で提供できていなかったのは大変残念なことでした

今回、マクニカネットワークスと国内総代理店契約を締結したことにより、導入が難しかった他の日本の企業に対しても、日本語対応や日本円での決済を始めとして、さらに迅速できめ細かいサービスやサポートを提供できるようになりました。お客様にどのようなサポートを提供すればいいのか、どうしたらお客様の成功をお手伝いできるかを正しく理解しているパートナーを得られたことは大変有望であり、とてもエキサイティングに感じています。

Q:GitHub Enterpriseで日本のソフトウェア開発をどのように変えていきたいとお考えですか? また、今後日本以外の展開も考えているのでしょうか?

A:これは日本に限ったことではありませんが、私たちは素晴らしいツールをソフトウェア開発者に提供することで、より仕事しやすく、より迅速に進められるようにしていくとともに、ソフトウェア開発者が楽しんでツールを使っていただけることを最も望んでいます。また、GitHubが長年培ってきたオープンソースの文化が企業内のオープンさを高めていくことで、オープンソースコミュニティと同様に他の企業が行っていることを学んでいけるようなソフトウェア開発の土壌を作っていきたいとも考えています。

日本は欧州などと比べ言語も文化も異なるため、日本での成功が当面の最大の目標ですが、それが実現できれば今後GitHubを使っているのにサポートが不足している他国への展開の興味深いモデルケースになっていくと期待しています。

GitHubを利用して世界中どこにいても仕事ができる環境を構築

Q:このウェブマガジン「LANchBOX」は、技術と人が交わる「場」をテーマにしていますが、Scottさんにとって好きな「場所」とはどこでしょうか?

A:GitHub,Inc.の社員の多くはリモートで働いており、ソフトウェア開発だけでなくすべての業務でGitHubを利用して、世界中どこにいても仕事ができる環境を作り上げています。

私も大好きな東京へ久しぶりに訪れることができましたが、普段通り支障なく仕事を続けることができます。仕事をあきらめることなく家族と一緒にさまざまなところに行くことができます。そのため、私にはどこかひとつの「場所」という考えはなく、好きなことをどこにいてもできること、家族と一緒にいながらできることをGitHubがお手伝いをしていると考えています。GitHubに携る者としてそれを幸せに感じているのです。

Q:最後にLANchBOXの読者にメッセージをお願いします。

A:今回、マクニカネットワークスという素晴らしいパートナーを得られたことで、日本市場に対するサービスをより高めていくことができると確信しています。同時に、Rubyを始めとした日本のオープンソースコミュニティの貢献には本当に感謝しています。その一部でも日本のお客様に恩返しができればとても嬉しく思います。

今後も私は日本に何度も戻って来たいと思いますので、機会があれば皆様にお会いできることを楽しみにしています。
―― またの再会をお待ちしています。本日はありがとうございました。

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