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ブルーコートの最高セキュリティ戦略責任者兼シニアバイスプレジデントであり、 RSA Conference のプログラム委員長を務めるヒュー・トンプソン氏に聞く。

RSA Conference のプログラム委員長を務めるヒュー・トンプソン氏に聞く

Blue Coat Systems, Inc.
Chief Security Strategist and Senior Vice President
兼 RSA Conference Program Committee Chairman
Hugh Thompson(ヒュー・トンプソン)氏

※本記事は2013年7月に行われたインタビューを元に作成しています

Hugh Thompson(ヒュー・トンプソン)氏は、米ブルーコートの最高セキュリティ戦略責任者兼シニアバイスプレジデントであるとともに、世界最大の情報セキュリティ・イベント「RSA Conference」のプログラム委員長を務めている。今回のインタビューでは、今年2月25日から3月1日にかけて米サンフランシスコで開催された「RSA Conference 2013」のテーマや手応えについてお話しをうかがう。さらに、ブルーコートの経営者としての立場から、企業買収やブランドのリニューアルなどに代表される最近のブルーコートの事業戦略について語ってもらった。

2つの大きな動き、モバイルセキュリティとデータ分析

Q:今年の「RSA Conference」は振り返ってみていかがでしたか?

A:2013年はセキュリティ業界にとって非常に重要な年でしたが、その中でも2つの大きな動きがありました。1つがモバイルセキュリティで、もう1つがデータアナリティクスです。それはカンファレンスのプログラムにも表れていましたね。

まずモバイルセキュリティですが、多くの企業では、BYOD(私物デバイスの業務活用)が進むにつれ、従業員が持ち込む様々なデバイスやテクノロジーに対して、どのようにセキュリティを担保するのかという点が大きなテーマになっています。

また、ビッグデータおよびデータアナリティクスは、自らの立ち位置を考える時期におかれているセキュリティ市場において、我々の産業を転換する可能性を秘めていると捉えています。

現在、各企業はどこでどのような動きが起こっているのか、どんな技術が機能するのか/しないのかを積極的に探っており、セキュリティ業界はルネッサンス期にあると言えるでしょう。

今年のカンファレンス参加者は過去最大規模

Q:カンファレンスの手応えはいかがでしたか?

A:今年の参加者は過去最大級となりました。特に企業のエグゼクティブ層の方々から高い関心を持っていただいたという点が特徴ですね。昨今、企業において情報セキュリティが高く位置付けされるようになりましたが、それを受けて今年は、大企業のCISO(Chief Information Security Officer)が一堂に介して語り合う「CISOビューポイント」というセッションを設けました。おかげさまでこちらも大盛況でしたよ。

Q:先ほどの2つの動き以外では、どのようなテーマが取り上げられたのでしょうか?

A:今日のビジネスにおいては、モビリティと同様、セキュリティもたいへん重要です。また、古いソリューションをクラウドやBYODなどの環境に合わせて更新することも大切です。加えて、IDおよびアクセス管理など、既存の技術についてあらためて取り上げたプログラムもありました。このほか、人間的な要素がシステムの信頼性やセキュリティにどのような影響を及ぼすのか、どのように意思決定を行っていくべきかも業界の大きな関心事になっていると思います。

Q:開催されるプログラムはどのようにして決められるのでしょうか?

A:例年、さまざまな提案(submission)が多くの識者や企業などから寄せられますので、それを最終的なプログラムにまとめていく作業はとても大変です。その過程では、セキュリティ業界のリーダー、具体的にはセキュリティの調査会社、アナリスト、ベンチャーキャピタル、セキュリティベンダー、ユーザなど、幅広い分野から約30名のメンバーを招いてプログラム委員会を開催。最終的には委員会で提起された案の中から3~7%程度を採用しました。

Q:RSA Conferenceと日本の関係についてコメントをお願いします。

A:今年6月にシンガポールで、アジアパシフィック地区で初めてとなる「RSA Conference Asia Pacific 2013」を開催しました。これがかなりの盛況であったことからも、日本およびアジアのポテンシャルの高さがうかがわれます。カンファレンスを通じて情報を共有したり、日本特有のベストプラクティスなどを学んだりと、とても有意義なイベントとなりました。

セキュリティはビジネスを後退させるものではなく、可能性を拡大するもの

Q:ブルーコートとして、いま注力している事業などについて教えてください。

A:今年5月、ブルーコートは大きな変革の時期を迎えました。ニューヨークや東京などの世界の主要都市で、重要なお客様をご招待したイベントを開催し、その中で業界における新しい視点について語りました。具体的には、「セキュリティはビジネスを後退させるものではなく、可能性を拡大するものでなければならない」というものです。この考え方に対応するため、ブルーコートの組織も大きく変更しました。

また、昨年から今年にかけて戦略的な企業買収を行いました。昨年12月にはスケーラブル・ネットワーク・セキュリティの分野で高い技術を持つクロスビームシステムズを買収。そして今年5月には、フロー処理のリーディング企業 ネトロノームのSSLアプライアンス製品ライン、さらにビッグデータセキュリティおよびフォレンジックで知られるソレラネットワークスを買収しました。

Q:これら企業を買収した目的や狙いはなんですか?

A:大局的には、セキュリティに対する外部からの視点を変えていくという目的があります。これまでセキュリティは、コストや税金のように“払わなくてはいけないもの”として捉えられてきました。しかし我々は、先ほども申し上げましたが、セキュリティはビジネスの成長をさらに加速させるための戦略であると考えています。コンシューマ向けに新たな技術を導入できるのも、セキュリティが確保されていればこそです。また、セキュリティを活用することで、ビジネスの効率化や効果の向上が可能になります。

買収のシナジー効果によりユーザへ有益なソリューションを提供

Q:一連の買収による効果としては、どのようなことが期待できますか?

A:例えば、ブルーコートが長年蓄積してきた外部に対するインテリジェンスおよび顧客が持つWebトランザクションの情報に、ソレラネットワークスが持つ内部ネットワークにおけるインテリジェンスが加わることで、より強固なセキュリティ対策が可能となります。また、マルウェアなどによる標的型攻撃(APT)に対しても、ソレラネットワークスのリアルタイムのインテリジェンスやフォレンジック機能を活用することで、単にマルウェアをブロックするだけではなく、情報漏洩や事象など攻撃の全容をリアルタイムで把握し、迅速に対応・復旧できるようになります。

現状、多くの企業がAPTに高い関心を持っており、その攻撃の根本の原因は何であるのかを理解しようとしています。その点についても、ソレラネットワークスの技術とブルーコートのクラウド型Web防御システム 「WebPulse」などを結び付けることで、非常にユニークな知見を提供できると考えています。

ソレラネットワークスの技術は、今後、ブルーコート内で大きく成長していくと思います。特にソレラネットワークスの技術基盤であるDeepSeeプラットフォームに、ブルーコートのモバイル技術、SSLの複合化技術を組み合わせて、ユーザへ有益なソリューションを提供できると確信しています。

Q:具体的に投入される製品について、可能な範囲で教えてください。

A:まずは、モバイル分野での製品の拡充です。例を挙げると、MDM(Mobile Device Management)ソリューションと統合可能なモバイル・ソリューションを、アライアンスパートナーと共同開発しています。加えて今年5月に発表したモバイル・アプリケーションは、デバイスにエージェントを搭載せず、ネットワーク上での稼働が可能です。これはとても有望な技術だと考えています。

また昨今、SSLトラフィックの可視化が企業にとって大きな関心事と言われています。最大でトラフィックの半分を占めるとされるSSLトラフィックですが、その多くが暗号化されたままで、復号化されていません。しかし、分析するためには復号化が必須ですから、今後SSLの復号化技術は大きな成長が見込まれる製品であると考えています。

「ビジネス・アシュアランス・テクノロジー」がユーザのビジネスに真の価値を提供

Q:このほどブルーコートはブランドのリニューアルを行いましたが、その狙いは?

A:ブルーコートは現在、大きな変革を進めており、その一環としてのリブランディングになります。繰り返しになりますが、セキュリティは防御だけでなくお客様のビジネスの可能性を拡大するものであり、ビジネスに真の価値を提供できる、という強いメッセージを込めています。それを伝えるのは難しいことですが、ブルーコートはお客様のパートナーとして、企業内へのメッセージの浸透をお手伝いしたいと考えています。

このビジョンを実現するためには、マーケティング活動だけでなく、ブルーコート自体の体制の変革も必要です。また、新たな製品を開発し、どのように提供していくかという点についても、変えていく必要があると考えています。

その具体的な取り組みとして、5月に新戦略「ビジネス・アシュアランス・テクノロジー」を発表しました。ビジネス・アシュアランス・テクノロジーは5つの「テクノロジーセンター」で構成しており、ユーザはこれらのテクノロジーを通じて、世界最高水準の技術、アプリケーション、デバイス、サービスを安全かつ確実に選択することが可能になります。

Q:最後にディストリビュータなど、パートナーに向けたメッセージをお願いします。

A:ブルーコートの新戦略は、ソリューションをより幅広いユーザ/企業の、より高いレベルに向けて提供できるようにし、ディストリビュータの方々のマーケットを拡大します。これにより、パートナーの方々は顧客と密接な関係を築いていくことが可能になるでしょう。その意味でも、ブルーコートの歴史上、最も素晴らしい時期がやってくると考えています。

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