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ノルマや予算のために「売る」営業スタイルでは満足できない。自分がどうお客様に貢献できるかということをいつも考えてきました。

インタビュー

仕事で人と会う機会が多い方もそうでない人も、ビジネスに欠かすことのできないIT業界にはいろんな方が関わっています。技術に秀でた人からコミュニケーション力の高い人まで、そのプロフェッショナルなスキルは千差万別。でも、そこにはやっぱり “人”がいるのです。そんなIT業界で働くプロフェッショナルな人々にスポットを当て、技術と人の交わりを再発見する「インタビュー」コーナー。普段の仕事内容はもちろん、IT業界で働き始めたきっかけや仕事における驚きのエピソード、オフの過ごし方や家族に対する思いなど、その人物の魅力に迫ります。

[今回インタビューした人]
株式会社日立情報システムズ
第二営業統括本部 市場開発部 ネットビジネスコンサルタント
池上 正夫 氏

1977年、日本ビジネスコンサルタント(現・日立情報システムズ)に入社。情報システム営業を経て、1995年よりインターネットビジネスに従事し、2004年からはWebマーケティングを専門的に手がける。現在はネットビジネスコンサルタントとして、自社Webサイトの戦略立案やWebマーケティングを指揮している。著書に『アクセス解析 徹底活用術~ネットで売上を増やす!』『Web2.0 実践ネットマーケティング』がある。

WebマーケティングはBtoB営業の大きな武器となりうる

Q:「ネットビジネス・コンサルタント」というのは、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。

A:Webサイトを活用して新規顧客を開拓し、企業の業績を伸ばす「Webマーケティング」という分野へ専門的に取り組んでいます。具体的には、自社Webサイトの戦略立案や企業向けのWebマーケティングコンサルティングといった業務になります。Webマーケティングというと、一般的にはBtoCビジネスにおけるネット販売のためのマーケティングだと捉えている方も多いかもしれません。しかし、私が取り組んでいるのはBtoBのビジネス分野におけるWebマーケティングです。わかりやすく言えば、セミナーや展示会、テレマーケティングといった従来型の営業活動に、Webサイトやメールマガジンによるナーチャリング(見込み顧客を啓蒙・育成するプロセス)を組み込んで、新規案件のリードを効率的に獲得しようという取り組みです。Webマーケティングを推進・実践してきた立場からすれば、WebマーケティングはBtoBのビジネス分野でこそ、その効果を最大限に活用でき、営業活動の大きな武器となると考えています。

自社のビジネスを発展させるためにもWebマーケティングへの取り組みは欠かせないと考えており、自社における成果やノウハウをCMS(コンテンツ管理システム)などの開発や提案にフィードバックしながら、お客様へと提供しているという側面もあります。

Q:Webマーケティングを成功させるコツはありますでしょうか。

A:まず、「Webマーケティングは会社の業績を向上させる有効な手段である」ということを経営者が正しく理解することです。その上で、営業部門とコンテンツを提供する部門を巻き込み、三位一体となり推進していくことが、Webマーケティングを成功へと導くために必要なことです。特に、営業が持っている「顧客とのコンタクト情報」とWebサイトの「アクセス情報」を紐付け、営業とコンテンツ作成のそれぞれに反映する仕組みを確立することが重要だと思います。こういう言い方をすると難しい話に聞こえるかもしれませんが、これまで個人の机の中に眠っていた名刺情報を共有し、その情報にさまざまな情報を紐づけていけば、そんなに難しいことではありません。すでに当社でも、ASPやSaaSでそのようなシステムの構築をはじめています。

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またコンテンツの作成に関して、エンジニアはクリエーターの考えていることが理解できないし、クリエーターはエンジニアが話している言葉が理解できない場合が多い。そのコミュニケーションロスをなくすために、両者のパイプ役となる人物の役割が重要になります。私自身も自社Webサイトの構築に関してはそういう役割を担うことが多いのですが、社内にそのような人材がいない場合は、社外のリソースを有効活用するのも一つの手だと思います。

一方、提供側ではなく、情報を受けとる側の視点から見ると、見込み客の興味や志向を企業が正しく分析し、それに合わせた情報を提供する必要があると思います。企業側の都合で情報を提供していても、コンテンツの内容は読まれず、すぐに捨てられる情報になってしまうだけです。適切な情報を適切なタイミングで提供できるようになれば、自ずと読まれる情報を提供できるようになると思います。

悩み苦しんだ営業時代。しかし、その積み重ねが大きな財産に

Q:どのような経緯で、Webマーケティングにかかわるようになったのでしょうか。

A:大学では社会工学を専攻していたのですが、世の中の役に立つコンピュータシステムを開発したいと思い、日本ビジネスコンサルタント(現 日立情報システムズ)に入社しました。しかし、入社早々、営業に配属されました。営業といっても、ソリューション営業ですので、お客様の業務に関する知識はもちろんシステム提案力なども求められ、担当するお客様も民間企業から官公庁まで業種や業務も多岐にわたりました。振り返ると苦しいことばかりだった気がしますが、いろいろなお客様と出会うことができ、幅広い知識を得ることができたのは、そのときの経験があったからだと思っています。しかし、営業はどうしても目先の数字に追われてしまいがちです。ノルマや予算を達成するために「売る」という営業スタイルに疑問を感じながら仕事をしていたので、本当にあるべき営業の姿とは何なのか、常に悩んでいました。

そんな中、95年にインターネット事業推進本部という部署ができて、そこでインターネットに関連するビジネスにかかわるようになりました。そのときに担当したのが、WindowsでもMacでも簡単にホームページを作成できるオリジナルのPC用ソフトです。そのような一般コンシューマ向けソフトを会社として手がけたことはなかったので、パッケージのデザインから販売ルートの開拓まで、すべてを一人でこなさなければなりませんでした。これらの経験を通じてこれまでにない満足感を得ることができました。この経験から、CRMやメール配信といった新システムの販売を手掛けるときも、どうすれば新しい価値を生み出すようなサービスや製品を提供することができるのかということを考えるようになりました。

その後、自社サイトにおける新規案件のリードを計画的に増やす方法はないだろうかと試行錯誤していたところ、現在のWebマーケティングという分野に取り組むこととなりました。

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ITソリューション営業という立場では、システムを売るという発想で終わってしまうことが多いです。しかし、システムの導入・運用はあくまで手段でしかありません。本来は、お客様のメリットを考え、お客様のビジネスに貢献できるシステムでなければなく、しいてはお客様の会社が良くならなければ意味がありません。そうした立場にあるなかで、自分がどう貢献できるかということをいつも考えており、その答えがWebマーケティングだったのかもしれません。

寝ている間に情報が整理される独自のアイデア創造術

Q: このオンライは、技術と人が交わる「場」をテーマにしています。池上さんにとって好きな「場所」はどこですか?

A:ゴルフ場です。単にゴルフをして体を動かす場所としてだけでなく、広い空の下で色々な人と話をしながらリラックスできる空間として、とても気に入っている場所です。また、一緒にラウンドしていると相手の性格もよくわかりますし、なんといっても社外の人と接すると刺激を受けることが多く、色々な楽しみがあります。

また、ゴルフ以外の趣味といえば、俳句です。俳句を詠むのが好きで、社内で句会を開いたりしてします。そのため、俳句仲間が集う場所も好きな場所の一つです。今年は句会をはじめて10周年となるので、句集を発行する予定です。

Q: せっかくですので、一句披露していただけませんでしょうか。

A:それでは、京都の南禅寺を吟行で訪ねたときに詠んだ句をご紹介します。

「水路閣 琵琶湖の青葉 匂いけり」

この句は琵琶湖から京都の町へ水を引いている水路の水路閣に上り、そこの青葉と流れる水の美しさを見て、琵琶湖の美しさも想像した句です。

Q: 俳句といえば、最近話題のソーシャルメディアに関して、「Webサイトは小説」、「ブログは詩」、「Twitterは俳句や短歌」と説明しているものがありました。このことに関して、Webマーケティングの専門家として池上さんはどうお考えになりますか。

A:私も最初にその説明を聞いたとき、うまいことを言うなと感心しました。そこで個人的にTwitterを試してみたのですが、Twitterのつぶやきと俳句は全く違うものだと感じました。俳句は自分の感情や思いを五・七・五で表現するものですが、Twitterはすごく自己満足的なものにしか見えなかったのです。

Q: では最後に、池上さんが行き詰まったり、壁にぶつかったりしたとき、どのように乗り越えてきたのか教えていただけますか。

A:以前は問題や悩みごとにぶつかると根を詰めて考え込むこともありましたが、最近では、あえて悩んだり、急いで結論を出したりしないようにしています。では、どうやって解決するかというと、関連する情報をできるだけたくさんインプットした後に寝ます。すると、自然と頭の中で情報が整理され、解決のためのヒントやアイデアが朝方に浮かんでくるのです。そのため、寝床にはいつでも浮かんできたことを書き留められるようメモを用意しています。あとは必要に応じて、手帳に挟んでおいて後で読み返したり、通勤の電車でアイデアを膨らましたりしています。もう5年ぐらいはこの方法で情報を整理しており、自宅にはメモの束が保管されてします。本を執筆するときにもこのメモをベースにして構想を練ったりしています。

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