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同じ機能で作業工数が1/4、5年でコスト差は3倍の開き!“仮想デスクトップ”徹底比較 6番勝負

マクニカラボ便り

「マクニカラボ便り」は、ちょっとやってみたい検証や、このテクノロジー、こう使ってみたらどうなる?など、マクニカネットワークスのエンジニアが気になった製品や技術について、ディープな検証や評価を行い、面白かったら皆さんにも公開しようという、ちょっと気まぐれなコーナーです。

2010年は仮想化元年と呼ばれるほど、昨今はサーバ環境のみならずクライアント環境の仮想化にまでその波が押し寄せてきています。そこで今回は、仮想化ソフトの雄であるマーケットを代表するA社のデスクトップ仮想化製品(以下、代表製品A)とRingCube社のVDESKについて、必要機材や構築負荷など徹底的に比較してみようと思います。

【今回のチャレンジ】
代表製品AとRingCube社のVDESKとで、それぞれ仮想環境を構築し、最小スペックとしてスモールスタート時の必要機材や各コンポーネント容量、そして構築負荷として環境構築時の所要時間を比較します。 具体的には、代表製品Aの仮想環境はA社が提供する評価版を使用し、評価ガイドを参照しながら、またVDESK環境はマクニカネットワークス社が提供する評価版を使用し、同じく評価ガイドを参照しながら構築しました。この作業を通して各製品の最小構成における必要機材、コスト、作業コストなどを比較してみます。

必要機材

まずは各製品を使用するにあたり、必要な機材や必須環境について比較してみました。

代表製品A

図1 代表製品A構成イメージ

図1 代表製品A構成イメージ

<コンポーネント>
必須コンポーネントと、各コンポーネントをインストールすることで別途インストールされる付属コンポーネントは下記の通りでした。

コンポーネント名 付随コンポーネント名 ディスク容量(MB)
ハイパーバイザ
7,604
統合管理コンポーネント
665
Active Directory Application Mode
Service Pack 1


代表製品製 Adam Instance 36
Microsoft .NET Framework 2.0
Service Pack 2
186
Microsoft .NET Framework 2.0
Service Pack 2 Language Pack JPN
6
Microsoft .NET Framework 3.0
Service Pack 2
168
Microsoft .NET Framework 3.0
Service Pack 2 Language Pack JPN
9
Microsoft .NET Framework 3.5 SP1 37
Microsoft .NET Framework 3.5
Language Pack SP1 日本語
37
Microsoft SQL Server 2005 493
Microsoft SQL Server Native Client 4
Microsoft SQL Server Setup Support Files 22
Microsoft SQL Server VSS Writer 1
Microsoft Visual C++ 2005 Redistributable 5
MSXML 6.0 Parser 1
統合管理モジュール 246 計:1,916
差分管理コンポーネント
43
接続管理コンポーネント
218

Active Directory Application Mode
Service Pack 1


代表製品製 Adam Instance 38 計:256
クライアントエージェント
108
クライアントソフト
42

<必須環境>
  • Active Directory
  • DNS
  • DHCP
  • File Server
<必須ライセンス>
  • Windows 2003 Server OSライセンス ×2
    統合管理サーバ用に1つ、接続管理サーバ用に1つ
  • Windows 7仮想デスクトップ専用ライセンス ×11
    標準仮想デスクトップの仮想マシン用に1つ、10ユーザ分の仮想マシン用に10つ
  • 代表製品A: Starter Kit(10ユーザ)

VDESK

図2 VDESK構成イメージ

図2 VDESK構成イメージ

コンポーネント名 付随コンポーネント名 ディスク容量(MB)
VDESK Admin Server
405
VDESK Client
5

<必須環境>
  • DNS

<必須ライセンス>
  • Windows 2003 Server OSライセンス×1
    VDESK管理サーバ用に1つ
  • Windows 7 OSライセンス ×1
    スタジオワークスペース作成用に1つ
  • VDESK 最小パック(50ユーザ)

必要機材の質

代表製品A

まず製品特長としてCPU、メモリ、HDD、場合によってはグラフィックカードなどすべてサーバ側のリソースを使用しますので、サーバインフラにはかなりのイニシャルコストがかかります。例えばWindows 7を10ユーザに対して快適に動作する環境を提供するとなると、下記のようにかなりのスペックを要求されることが分かります。

CPU:Pentium IV 2.0GHz x 10 = 20GHz
メモリ:2GB x 10 = 20GB
HDD:20GB x 10 = 200GB

今回有名メーカ数社に見積りをお願いしたところ、ブレードサーバを5枚搭載したVDIエントリーモデルと高性能ストレージを合わせると230万~400万程度の見積りとなりました。
またコンポーネントが要求するスペックとしては、統合管理サーバと接続管理サーバのシステム要件は、どちらもPentium IV 2.0GHz以上のCPUと2GB以上のRAMとなっています。

VDESK

10,000ワークスペースをサポートする前提で、システム要件としては最小512MB以上、推奨2GB以上のメモリを要求する程度で、CPUパワーはそれほど必要ありません。VDESKの製品特長を生かすには、リッチクライアントのハードウェア性能をそのまま享受できるPCデプロイ※1がお勧めなので、サーバ側にパワーを持たせる必要がないのです。10万円そこそこで買えるPCでも十分でしょう。VDESKはクライアントPCスペックの約99%の性能を引き出しますので、仮想ワークスペースのスペックは完全にクライアントPCに依存します。なお、シンクライアントのようなネットワークデプロイ※2を利用したい場合、CPU、メモリはクライアントPCのものを利用しますが、HDDに関してはファイルサーバ上のイメージを利用するので、ファイルサーバにはそれなりのディスク性能が求められます

※1 クライアントPCのHDDに仮想ワークスペースを保存し、ローカル起動する方法
※2 VDESK管理サーバで定めたネットワーク上の保存場所に仮想ワークスペースを保存し、ネットワーク起動する方法

作業内容

代表製品A

クライアントPCからクライアントソフトを利用して仮想デスクトップを利用できるまでの作業内容を列挙します。詳細は評価ガイドを参照してください。
今回Active Directoryは既存環境のものを流用しています。

項番 メインタスク サブタスク
1 ハイパーバイザ環境構築 物理サーバにハイパーバイザをインストールする。
2 管理端末の用意 管理用Windows PCにハイパーバイザ管理用クライアントソフトをインストールする。
3 統合管理サーバ構築 ハイパーバイザ管理用クライアントからハイパーバイザにログインする。
仮想PCにWindows 2003 Serverをインストールする。
仮想PC用 Toolをインストールする。
ドメインに参加する。
統合管理コンポーネントをインストールする。
差分管理コンポーネントをインストールする。
4 接続管理サーバ構築 仮想PCにWindows 2003 Serverをインストールする。
仮想PC用 Toolをインストールする。
ドメインに参加する。
接続管理コンポーネントをインストールする。
5 仮想デスクトップの用意 クライアントソフトから接続管理サーバにログインする。
仮想PCにWindows 7をインストールする。(DHCP設定必須)
仮想PC用 Toolをインストールする。
ドメインに参加する。
クライアントエージェントをインストールする。
Fire Wallを無効化する。
リモートデスクトップ接続を許可する。
シャットダウンし、スナップショットを取得する。
テンプレートを作成する。
6 アクセス権限の設定 WebブラウザからConnection Serverにログインする。
接続管理サーバに統合管理サーバを登録する。
仮想デスクトップと利用可能ユーザの紐付けを行う。
7 クライアント環境の用意 クライアントソフトをインストールする。

VDESK

こちらもクライアントPCからVDESK Clientを利用して仮想ワークスペースを利用できるまでの作業内容を列挙します。詳細は評価ガイドを参照してください。

項番 メインタスク サブタスク
1 VDESK管理サーバ構築 物理サーバにWindows 2003 Serverをインストールする。
VDESK Serverをインストールする。
2 スタジオ環境の構築 物理PCにWindows 7をインストールする。
WebブラウザでVDESK管理サーバへアクセスし、VDESK Clientをインストールする。
スタジオ環境を構築する。
3 マスターワークスペースの登録 スタジオ環境をマスターワークスペースとしてVDESK管理サーバへアップロードする。
4 アクセス権限の設定 WebブラウザでVDESK管理サーバへアクセスし、VDESKユーザを作成する。(Active Directoryからのインポート可)
マスターワークスペースと利用可能ユーザの紐付けを行う。
5 クライアント環境の用意 WebブラウザでVDESK管理サーバへアクセスし、VDESK Clientをインストールする。
VDESK ClientからVDESK管理サーバにアクセスし、個人用仮想ワークスペースを作成する。

感覚的にVDESKは構築が簡単そうなだなぁと思っていただけましたか?では実際にかかった作業工数を比較してみましょう。

実作業でかかった工数

今回の作業では、各OSのインストール作業にはWindows Updateの適用時間は含んでおらずデフォルト状態としています。また、どちらの製品も十分に事前検証し、スムーズに構築が進んだ場合の工数を計測しました。 前述の作業内容で紹介した各項目にかかった時間は下記の通りです。

代表製品A

1. ハイパーバイザ環境構築 20min
2. 管理端末の用意 1min
3. 統合管理サーバ構築 1h35min
4. 接続管理サーバ構築 45min
5. 仮想デスクトップの用意 2h50min
6. アクセス権限の設定 5min
7. クライアント環境の用意 4min


計 5h40min

VDESK

1. VDESK管理サーバ構築 40min
2. スタジオ環境の構築 42min
3. マスターワークスペースの登録 1min
4. アクセス権限の設定 5min
5. クライアント環境の用意 4min


計 1h32min

どうでしょう?感覚的な簡単さだけでなく、実時間でもVDESKは約25%の構築負荷しかかかりませんでした。

作成環境でできることの差

両製品ともすべての機能を理解し比べることはできませんでしたが、製品HPやリリースノート、マニュアルから判断するに大きな違いはないように思いました。

代表製品A

  • オンラインでの仮想デスクトップ利用
  • マスターイメージに施したアップデートの配信
  • 管理ダッシュボードによるレポートなどの管理
  • アンチウイルスおよびマルウェアスキャン機能の一元管理
  • Macデバイス、シンクライアント、iPadなどの複数デバイス端末利用
  • PCoIPによるネットワーク帯域の有効利用
  • システム障害時のリカバリ(BCP,、可用性)

VDESK

  • オンラインでの仮想デスクトップ利用
  • オフラインでの仮想デスクトップ利用
    • -HDDブート
    • -USBブート
  • マスターイメージに施したアップデートの配信
  • 管理ダッシュボードによるレポートなどの管理
  • 仮想ワークスペース起動前のホストOSヘルスチェック機能
  • システム障害時のリカバリ(BCP、可用性)

出来ることの差とは少し違いますが、ユーザ視点で見るとやはりパフォーマンスに関してサーバ側のリソースを使うシステムかクライアント側のリソースを使うシステムかで違いが出てくるように思います。極端な例を挙げると、Webブラウザやメーラーなどしか使わない業務であれば大きな差はうまれませんが、3D CADソフトを使う業務ではパフォーマンスに大きな差がうまれてくるでしょう。もちろんサーバインフラに多大なコストを投資しグラフィック機能を充実させ十分なメモリを確保できている場合や、クライアント端末が非常に非力なマシンであればパフォーマンスは逆転するでしょう。

今回のテーマである最小スペックでのスモールスタートとして考えた場合、サーバインフラに十分な投資を行うケースは非常に稀だと思いますので、既にお持ちの資産を有効活用できるという面で、VDESKは導入し易い製品であるように思えます

Minimumコスト

最後にコスト面での比較をしてみます。ここでのコストとは下記方程式で定義します。

コスト

イニシャルコスト(ハードウェア+ソフトウェア+構築作業)

ランニングコスト

CPU:2GHz、メモリ:2GB、HDD:20GBのWindows 7をスターターキットに含まれるユーザ分用意した場合を想定し、各製品最小構成におけるハードウェアの金額は下記の通りです。金額については弊社で取得した最小見積価格をベースとしています。


代表製品A

10ユーザ分
  • ブレードサーバ  1,800,000円
  • データ保存用高性能ストレージ  500,000円

計2,300,000円


VDESK

50ユーザ分
  • VDESK管理サーバ  100,000円
  • データ保存用ストレージ  40,000円
  • VDESKスタジオ環境作成用PC  60,000円

計200,000円

※PCデプロイ前提。
  ネットワークデプロイ使用時は、高性能ストレージが必要。

次に各製品最小構成におけるソフトウェアライセンスの金額は下記の通りです。金額について各製品ライセンスは定価ベースで、OSライセンスはOPEN価格なのでいくつかのオンラインショップの平均をとってみました。時期によっては金額の上下が発生すると思いますのでご了承ください。

代表製品A

10ユーザ分
  • 代表製品A: Starter Kit(10ユーザ)  390,000円
  • Windows 2003 Server OSライセンス  34,000円 × 3 = 102,000円

計492,000円


VDESK

50ユーザ分
  • VDESK 最小パック(50ユーザ)  1,990,000円
  • Windows 2003 Server OSライセンス  34,000円
  • Windows 7 OSライセンス  39,600円

計2,063,600円

VDESKは代表製品Aと比べると若干高い印象がありますが、最小構成のユーザ数が10ライセンスと50ライセンスの違いがある点にご注意ください。1ライセンスあたりの費用は大差ありません。
最後にランニングコストを比較します。今回ハードウェアの保守費は除外していますが、実際の導入時にはハードウェア保守費が加算されます。

代表製品A

10ユーザ分
  • 仮想デスクトップ専用ライセンス1,100円/月額 x 11 ユーザ x 12ヶ月 = 145,200円/年額
  • 代表製品A Starter Kit マルチベンダー保守85,000円/年額 (8,500円/ライセンス)

計 230,200円/年額


VDESK

50ユーザ分
  • RingCubeスタンダードサポート358,200円/年額 (7,164円/ライセンス)

VDESKはホストOSから完全に切り離された仮想ワークスペースを作成するために、クライアントPCのホストOSから必要なコンポーネントを拝借します。1つのPC上にOSコンポーネントが1つしか存在しないため、セカンドOSライセンスが必要ありません。

これらを踏まえたコスト比較(構築負荷、ハードウェア保守費を除く)は下記の通りです。代表製品AとVDESKではライセンス数に5倍の差があるにも関わらず、コスト差が目立ちません。もし代表製品Aを50ライセンス使用するとなると、ソフトウェアライセンスや保守料が増加するだけでなく、インフラとなるハードウェア環境に更なる投資が必要になるのではないでしょうか。

代表製品A

10ユーザ分
  • 10ユーザコスト=2,300,000 + 492,000 + 230,200 ×年数
  • 1年使用:2,792,000 + 230,200 = 3,022,200円+ VDI環境ハードウェア保守
  • 5年使用:2,792,000 + 1,151,000 = 3,943,000円+ VDI環境ハードウェア保守

VDESK

50ユーザ分
  • 50ユーザコスト=200,000 + 2,063,600 + 358,200×年数
  • 1年使用:2,263,600 + 358,200 = 2,621,800円
  • 5年使用:2,263,600 + 1,791,000 = 4,054,600円

やってみての感想

代表製品Aの評価ガイドは英語版を元に構成されており、バージョンも少し古いのか示された手順通りには進められないことがありました。上述の順番で進めていけば問題ないはずなので、参考にしていただければ幸いです。また必要サーバとコンポーネントが多く、それに伴いインストール作業も余分にかかりました。必須環境についても、Active DirectoryとDHCPがないと使用できませんので注意が必要です。今回は以前業務で使用した環境を流用しましたが、現在Active DirectoryやDHCPをご使用していない場合はもうひと手間かかる点にご注意ください。

また今回は差分管理コンポーネントを使用したので、テンプレートから作成されるリンククローンを利用し各ユーザの差分データのみを保存することでFile Serverのディスク容量を効率的に使用することができました。
代表製品Aの最新版(2010年10月時点)からオフラインモードが実装されましたが、この機能を利用するには別途もう1台データベース用サーバを立てなければいけないため、今回の「最小スペックとしてスモールスタート時の必要機材」から外れるので触れていません。

他にも色々な管理機能やセキュリティ機能が実装されていますが、時間の都合上詳しく確認することができませんでした。

VDESKの評価ガイドはお客様から見ても分かりやすく、ひと通りのセットアップをスムーズに行うことができたとの声をいただいており、作業は比較的簡単だと思います。また環境構築後にできることとしても、VDIシンクライアント環境と比べても大きく劣る点はありませんので、VDIシンクライアント環境を構築したいけれどもコストが高すぎる…とお悩みの方には自信を持っておすすめできる製品です。是非一度皆さんの手で製品に触れて、感じてみてください。

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