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クラウド時代に求められるアプリケーション配信を読み解く ブルーコート日本代表に聞く、次世代戦略

特集 クラウド時代に求められるアプリケーション配信を読み解く ブルーコート日本代表に聞く、次世代戦略

Webアプリケーションを業務に利用する企業が圧倒的に増え、さらにネットワーク越しにアプリケーションを活用するクラウド環境が整いつつある昨今。ウイルスやマルウェアなどWeb脅威への対策や快適なアプリケーション利用を促すWAN高速化など、企業では新たな時代に備えた対策が急務となっている。そこで、アプリケーション配信を最適化するWAN高速化やWebセキュリティアプライアンス分野における日本トップシェアを誇るブルーコート合同会社の日本代表であり、就任一年を迎えたマネージングディレクター マット・ベネット氏に、2010年以降に市場がどのように動くのか、注目されるキーワードを交えながら今後の製品戦略について聞いた。

日本のネットワーク事情 2009

海外に比べて高速なネットワークが安価に手に入りやすい日本。サーバ仮想化の成熟に伴ってデータセンタでのサーバ統合及びアプリケーション集約が進み、様々な業務がネットワークを介して行われるようになっている。また、ソフトウェアをネットワーク越しに利用するSaaS(Software as a Service)やプラットフォーム環境そのものを提供するPaaS(Platform as a Service)、デスクトップ環境を提供するDaaS(Desktop as a Service)などクラウドビジネスが様々な場面で語られており、アプリケーションを配信するネットワークの重要性はますます高まるばかりだ。

そんなアプリケーション配信ネットワークにおいて課題となるのは、やはりWebアプリケーションにおけるセキュリティ対策だろう。以前アジア太平洋地域全域のサービスプロバイダーセールスを担当していたベネット氏によれば、日本におけるWebセキュリティの基本は“URLフィルタリング”が中核として検討されることが多いという。しかし、他のアジア各国では「すでにフィルタリングはコモデティ化しており、Webに潜む脅威にリアルタイムな対処が可能な環境」が求められている状況にあるようだ。現在でもオープンソースのプロキシソフトとして有名なSquidなど、第一世代のフィルタリング技術を活用しているソリューションが多いなか、脅威をダイナミックに検知できる技術に利用者のニーズが移ってきているという。

また、同時に課題として顕在化してきたのが、複雑化するプロトコルによってネットワークが効率的に利用できていない点。ネットワークを流れるパケットを実際に調べてみると、多くの企業担当者が驚きの声をあげるとベネット氏。「メールに使用するSMTPが30~40%、Webブラウジングで利用するHTTPなどが20%ぐらいだろうと多くの方が固定観念を持っています。しかし、実は様々なプロトコルが利用されているのです。」一昔前ならCIFSやMAPIに絞られていたプロトコルも、今ではHTTPやHTTPSはもちろん、ストリーミング制御のRTSPやシンクライアントで利用される画面転送プロトコルのICA、IP電話などで利用される呼制御プロトコルのSIPなど様々なものが利用されている。

ネットワークを効率的に利用するためには、そこで何が使われているのか、まずは状態の把握から始める必要があるだろう。つまり、ネットワークを“可視化”することが何よりも重要だ。現状把握を行ったうえで、それを上手に制御することがネットワークを有効利用するための第一歩となる。ネットワークの帯域を単純に増やせば解決すると思われる方もいらっしゃるだろうが、「帯域を太くするだけでは何の解決にもなりません。利用者が同じ使い方をし続ける限り、すぐに飽和状態になるのは目に見えています。」とベネット氏。

ブルーコートの強みは“Web2.0”対応

そんなアプリケーション配信ネットワークに設置されるWebセキュリティアプライアンス及びWAN高速化製品を提供している同社は、株式会社富士キメラ総研やIDC Japanなど調査会社が発表している市場占有率において、日本におけるトップベンダーに位置付けられている。技術的な強みはもちろんだが、パートナーシップの重要性と顧客のニーズに合わせた製品が提供できるかどうかの柔軟性が大きなシェアを維持するために重要視しているポイントだとベネット氏は分析する。「10人規模で利用するアプライアンスもあれば、国全体のインターネットトラフィックのフィルタリングを行うソリューションまで、あらゆるビジネスニーズに柔軟な対応ができることが当社の強みの一つといえます。」

そんな同社の仕組みで特徴的なのは、URLに対するレイティング(評価)能力だろう。同社では毎週10億件ものレイティングを行っており、分析内容に基づいて脅威の有無を判定している。また、Blue Coat WebPulseと呼ばれるクラウドサービスは、URLリクエストをリアルタイムに分析し、同社を利用している6200万ユーザと情報共有が可能になる。この6200万ユーザは現時点でBlue Coat Intelligence Servicesを利用しているユーザ数であり今後もユーザが増え、更に情報共有できるソース(母数)が増えます。従来型のURLフィルタリングとは違う、Web2.0型サービスと呼べるものだ。この分析のおかげで、問題のあるWebサイトの一部分を遮断することも可能となっている。「GoogleだからWebサイトが安全、というわけではありません。マルウェアやスパイウェアが部分的に仕込まれているケースもあるのです。」とベネット氏は警鐘を鳴らす。同社のソリューションであれば、Webの新たな脅威についても高度な対応が可能となる。

市場における同社の競合製品については、WAN高速化領域ではシスコシステムズやリバーベッドテクノロジーなどを挙げることができるというが、「Webセキュリティ及びWAN高速化を同一プラットフォームにて提供できるベンダは我々以外にありません。」とベネット氏。特に、アプリケーション配信ネットワークに欠かせない要素は、大きく“可視化”“セキュリティ”“高速化”が重要と語る。しかし、多くの製品はセキュリティに偏っていたり、高速化に特化していたりするため、効率よくネットワークを管理することが難しい。これら3つの要素を同一プラットフォームで提供することが可能な同社なら、TCO削減など運用管理面でのアドバンテージも得られるはずだ。

もちろん、同社は研究開発の部分でも多くの投資を行っており、売上比15~17%の研究開発費を投じ、研究開発拠点の統合によって知識や専門性の集約を図っている。また、6200万人から寄せられた情報をもとに、ビジネスシーンに役立つ知識をブログなどでも紹介している。SAPやオラクルアプリケーションズなどERPアプリケーションをどのようなネットワーク構成で効果的に利用できるかなど、単にWebの脅威に関する情報の提供だけにとどまらない。それは、同社が「利用者とコンテンツの間にいる」企業だからこそ。ネットワークに流れる情報の可視化が可能となり、コンテンツの使われ方など様々な情報が同社の知識として蓄積されるからだ。

4つの注目キーワードと次世代戦略

未曾有の経済危機を経験した2009年は終わりを告げ、いよいよ2010年に突入した。経済危機からの脱却を図るべく、多くの企業が成長への第一歩を踏み出そうとしているなか、市場における注目キーワードについて尋ねてみた。ベネット氏が注目するのは「クラウドサービス」「仮想化」「モバイル」「IPv6」の4つだ。

本格“クラウドサービス”への可能性

まずクラウドサービスについてだが、同社はゼロデイに対する脅威を取り除くためのクラウドサービス「Blue Coat WebPulse」を提供していることはすでに述べたが、あくまで顧客側にアプライアンスを設置した形での情報提供サービスであり、本格的なクラウドソリューションというわけではない。ただ、世界中でSaaSなどのサービスが定着してきていることからも、セキュリティサービスそのものを同社自身もしくはパートナーと連携して提供する可能性は十分あるという。また、クラウド環境を利用する場合には、企業側でWANに対する高速化対策を行う必要が出てくることも。このWAN高速化に関しても製品提供が可能であり、クラウドサービスに関する同社の関わりは非常にユニークな立場となる。

OEM供給へ向けた“仮想化”への対応

次に、仮想化に関して言えば、サーバ仮想化技術が成熟しつつある中で、デスクトップ環境へ仮想化技術を応用する“デスクトップ仮想化”にシトリックス・システムズやヴイエムウェアなど仮想化ベンダが開発資源を集中しつつあるのが今のトレンド。仮想化領域に関しては、すでにOEMによる技術供給を視野に入れているとアナリストに発表している同社。デスクトップ仮想化がさらに進んでDaaSなどの環境が増えてくれば、シンクライアントなどで利用するICAやRDP、さらにはPCoIPなど新たなプロトコルを制御するWAN最適化のニーズも増えてくるはずだ。

爆発する“モバイル”だから必要となる制御

モバイルに関して言えば、サービスプロバイダ側での対応と外部から企業資産へのアクセスを可能にするモバイルクライアントの制御をどうするのかという2つの方向が考えられる。ベネット氏自身もiPhoneからセールスフォース・ドットコムへアクセスし、モバイル環境を積極的に活用している一人。「モバイルデータが爆発的に広がっており、ここにもセキュリティ対策と高速化・最適化のニーズは生まれるはず。」と期待を寄せている。すでに携帯プロバイダと提携し、未成年に対する有害コンテンツのフィルタリングを実施している同社だけに、今後もさらなる展開が考えられるだろう。

IPの枯渇で加速する“IPv6”エスカレーション

今後1年の間に重要なテクノロジーとなるのがIPv6だ。すでに数年以内にIPv4アドレスが枯渇することが指摘されており、いよいよ待ったなしの状況に追い込まれている。サービスプロバイダ側ではIPv6展開のためのプランを持っており、ユーザ企業でも今後何かしらの対応を迫られるだろう。同社では、IPv4からIPv6への移行デバイスとして活躍する製品を提供しており、IPv4ネットワークを保ちながらIPv6サービスを展開することができるようになっている。

注目する様々なキーワードに対して同社がどのような戦略をとっていくのか期待されるところではあるが、それにもまして日本で重視しているのがパートナー戦略だ。ユーザに対してはTCO削減とコンプライアンス効果を発揮できる製品であることをアピールしながら、パートナーに対しては「市場でストレートに売れる」製品を提供していき、戦略的な販売支援をもとに積極的にパートナーと協業していく方針だ。2010年以降、業界トップベンダーが市場にどのようなアプローチをしていくのか、その業界動向に目が離せない。

Reported by Hirokazu Charlie Sakai, Writer

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