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雑誌・テレビ・Webに続く新たなメディアを探れ!最新“デジタルサイネージ”事情

デジタルサイネージ ジャパンの会場の様子

テレビや雑誌、インターネットなど、情報発信を行うメディアには様々な形態が存在しているが、現在新たなメディアとして様々な業界から期待されているものがある。それは、街頭などに設置されたディスプレイを使って情報発信を行う「デジタルサイネージ」と呼ばれるものだ。このデジタルサイネージの可能性について、注目を集めるソリューションを交えながら今後の展望を概観していきたい。

成長が期待されるデジタルサイネージとは?

近年にわかに注目を集めているデジタルサイネージというキーワード。かつては「ダイナミックサイネージ」「ナローキャスティング」など様々な呼び名を持っていたが、現在ではこれらを総称してデジタルサイネージと呼ぶのが一般的だ。2007年6月に発足したデジタルサイネージコンソーシアムの定義によれば、「屋外や店頭、交通機関など、一般家庭以外の場所においてディスプレイなどの電子的な表示機器を使って情報を発信するもの」とされ、時間と場所を特定できる唯一のメディアとして期待されている。

株式会社ミック経済研究所の資料によれば、デジタルサイネージソリューション市場は年平均14%の高い成長率で推移するとみられており、2013年には1100億円の市場規模になると予想されている。新宿や渋谷など街角にあるオーロラビジョンはもちろん、電車の扉上部に設置されているパネル、駅や公共機関に設置されたタッチパネル式のキヨスク端末、エレベータの中にある液晶ディスプレイなどがこのデジタルサイネージ領域に含まれていることから見ても、すでに社会的なインフラとして整備されつつあると言えるだろう。

図:デジタルサイネージソリューション市場規模推移

図:デジタルサイネージソリューション市場規模推移
(出典:ミック経済研究所「デジタルサイネージソリューション市場の現状と展望 2009年」より)

日本の実情に迫る!デジタルサイネージ最新事情

“デジタルサイネージジャパン”で注目を集めた「Scala」

そんなデジタルサイネージの最新動向を知る上でも欠かせないイベントが、2009年6月10日~12日に幕張メッセで開催された。国内外問わず多くの企業が参加した「デジタルサイネージジャパン」だ。次世代メディアとして期待されているデジタルサイネージを体感できる場として貴重な展示会だったこともあり、多くの来訪者で賑わいを見せていた。出展された製品は、液晶やプラズマなどのディスプレイ関連製品や映像制作ソフトウェア、音響システム、ネットワーク機器などが代表的なもの。デジタルサイネージに関連した製品群は多岐に渡っており、今後の市場展開が期待されている。さらに、NGN(Next Generation Network)やLTE(Long Term Evolution)など次世代ネットワークの開発に力を注ぐNTTが基調講演を務めており、広帯域ネットワークと融合する有力なアプリケーションの1つとしてデジタルサイネージに注目が集まっていることがわかる。

そんな展示会の中でも特に多くの関係者が興味を示していたのが、柔軟な拡張性と大規模案件に豊富な実績を持つデジタルサイネージソフトウェア「Scala」だ。SCALA社はアメリカに本社があるデジタルサイネージソフトウェアのトップベンダーで、以前からマルチメディア系のソリューションを提供していた会社。「SCALAで繋がるデジタルサイネージの世界」をテーマに、エレベータの中から大型商業施設まで幅広い環境にデバイス提供が可能な株式会社日立製作所や、大型LEDを活用したソリューションに強みを持つ株式会社バンテンなど、代理店や関係各社6社と共同でブースを展開していた。今後の動静に注目したい企業の1つだろう。

SCALA社 ブース

老舗ベンダに聞く!デジタルサイネージの市場と課題

そこで成長が期待されるデジタルサイネージの市場動向について、前述したSCALA社の日本法人であるSCALA株式会社 取締役社長のギヨム プル氏にお話を伺った。

22年前から続く老舗!デジタルサイネージ参入のきっかけ

デジタルサイネージ参入のきっかけについては、小さな町のケーブルテレビシステムや社内放送用のコミュニケーションツールとしてソリューション提供を22年前から行っていたという同社。「当時はデジタルサイネージという言葉はありませんでしたが、今のソリューションの原型はその当時からあったものです。ただ、今日のデジタルサイネージという言葉には、我々が考える以上に幅広い意味が含まれています。極端に言えば、CD-ROMなどをバイク便で現場に運び、現場の装置に挿入して広告を表示させるやり方もデジタルサイネージに含まれてしまいます。しかし、ネットワークを経由してコンテンツが柔軟に更新でき、また時間や場所に応じてダイナミックにコンテンツが出し分けできるものがデジタルサイネージの本質だと我々は考えています。」最終的な目標については、“水道の蛇口をひねるように”デジタルサイネージが情報提供インフラとして欠かせない手段になることを願っているとギヨム プル氏は語る。

ギヨム プル氏

海外とは一味違う面々!日本のプレイヤーにおける特長

ギヨム プル氏

日本ではまだ発展途上のデジタルサイネージだが、海外との違いを尋ねてみたところ、特にプレイヤーの顔ぶれに大きな違いがあるという。「アメリカであれば素材メーカーのスリーエム社やネットワーク機器が有名なシスコシステムズ社などがプレイヤーとして有名ですが、日本の場合はパナソニックやソニー、シャープなどパネルメーカーが主なプレイヤーに挙げられます。特にパネルと一緒にデジタルサイネージソリューションを総合的に提案されているケースが目立ちます。」また、面白いことに、海外では前述のパネルメーカーとは協業しているが、日本国内では競合する場面も見受けられるという。「パネルを売るための付加価値として映像配信などデジタルサイネージ的なソフトウェアをパネルメーカー自身が開発しています。日本国内で海外と同じように協業できない理由はそのあたりにあるのかもしれません。」とギヨム プル氏。

経験から生まれた強みが魅力!競合にはない優位性

SCALA社 ブース

世界中でデジタルサイネージソフトウェアを展開している同社だが、その強みは一体どこにあるのだろう。ギヨム プル氏は「デジタルサイネージソフトウェアをワールドワイドで展開しているため、数千台を超える大規模システムの実績が豊富にある」ことだという。例えば、アメリカ全土に展開するガスステーションの事例やノルウェーにある競馬場近くの売店すべてに3000台のパネルを設置した事例など、その規模は日本国内にはない大きさだ。また、2000台強を導入したバーガーキングの事例では、ドイツやオランダ、ベルギーなど複数の国をまたいでデジタルサイネージソリューションを提供している。「これら大規模案件を経験することで、コンテンツの再配信や現場の状況に応じたコンテンツの出し分けなど、大規模システムを運用する上で苦労するポイントをソリューションで吸収できるノウハウを持っています。」とその優位性を語る。他にも、月額でデジタルサイネージが利用できる小規模向けサービスの提供や、地震感知のシステムと連動するなど様々なアプリケーションと連携しやすいインターフェースを持っているのも特長に挙げられるという。

効果を測る指標が欲しい!現状の課題と解決策

iCapture

日本でデジタルサイネージを展開するにあたっての課題はどのあたりにあるのか聞いたところ、具体的な効果指標の欠如にあるとギヨム プル氏は分析する。「デジタルサイネージという新たなメディアの費用対効果をどのように算出すればいいのか、という要望が多く聞かれます。例えばQRコードを画面に表示したり、Felicaをかざしてもらったりすることで効果測定を図ろうという試みも行われましたが、アクションに繋がりにくいのが実態です。実際の利用者はメリットがないとアクションを起こさないものですし、ましてやFelicaなどは電子マネーのさいたるもの。“お金を取られるのでは”という感覚の人も少なくないはずです。」逆に、利用者にメリットを感じてもらう仕組みの提案、例えばアクションするだけでチャリティに協力できるなど、違う発想での仕組みづくりをギヨム プル氏は期待しているという。

今回出展しているソリューションの中には、こうした課題を解決する可能性を持つ、顔認識技術を用いたTruMedia社のiCaptureと呼ばれる効果測定ソリューションも登場した。「iCaptureは、顔認識技術を使って視聴者の映像を分析することで、テレビの視聴率や雑誌の販売部数などと同じように費用対効果を図ることができます。すでに海外ではiCaptureを活用した事例も登場しており、日本においてもこれから広がっていく可能性を秘めています。海外では効果測定をあまり重視しない傾向にありますが、日本の場合は非常に重要です。」と日本のビジネスシーンと利用者にも受け入れられやすいソリューションとして注目しているという。

さらにこのiCaptureをコンテンツ配信プレイヤーと連動させることで、リアルタイムで分析した視聴者属性に応じてダイナミックにコンテンツを切り替えることが出来る為、男性なら車の広告を、女性なら化粧品の広告を出し分ける、といった使い方が可能になる。この機能は展示ブースでデモが実施されたが、2002年に公開された映画「マイノリティ・リポート」で、主演であるトム・クルーズの目を識別して個人を特定し、その属性に応じた広告を配信するシーンを思い出させる内容だった。まだ先の技術だと思われていたものが、すでに実現されつつあるようだ。

デジタルサイネージの新たな“表現手法”への挑戦

デジタルサイネージの可能性について様々な検証が行われているが、テレビや雑誌などとは違う新たな表現手法の実証試験がすでに開始されている。日本ユニシス株式会社が中部国際空港(セントレア)内で行っている3D動画サイネージを用いたキオスク端末の実証実験だ。すでに3月30日から開始しているこの実証試験だが、日本では導入事例も少ないことから視聴者の注目を集められるコンテンツの制作ノウハウが蓄積されていなかった。そこで、顔認識技術を用いた効果測定を共同で行い、注目度の高い3D動画コンテンツの特性を明らかにする試みがスタートしている。様々な実証試験に伴う効果検証として、顔認証技術が有効な手段として多くの場面で活躍し始めることだろう。

Reported by Hirokazu Charlie Sakai, Writer

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