DXの軸となるデータ資産を作る! 第2回 課題を放置することによる弊害と2つの課題解決アプローチ

第1回では、商品マスタデータの重要性・課題について特集しましたが、第2回では、課題を放置することによる弊害と解決アプローチについて考えていきます。

特集第1回のポイントをおさらいしましょう。

  1. 商品マスタのデータは、これからのDXの基盤となる重要な情報資産である。
  2. 商品登録業務に人を割り当てることが年々難しくなる。
  3. 商品数が増えれば増えるほど、商品登録業務に必要な工数が膨大になっていく。

課題を放置することの弊害

今後商品数量が2倍、3倍となった時に、今までの商品登録業務のやり方を持続的に実施し、ビジネスを拡大させていくことは出来るでしょうか?
多くの企業では、この問いに対して明確な課題解決案を持っていません。

「商品登録担当者を増やすことが出来ない」「商品登録業務に時間がかかっている」
これらの課題を放置し続けることは、今後のビジネス拡大への大きな障壁となります。
商品登録業務は、年間を通じて継続的に必ず発生する業務です。ビジネスの業態が大幅に変わり、商品を取り扱わなくなるといったことが無い限り、10年、20年と継続して必ず実施し続けていかなければいけない業務です。そのため、この課題解決の重要性は極めて高いものとなります。

商品マスタデータベースは、今後のDXの基盤となる重要な情報資産です。DXトレンドの中、様々な高度なマーケティング手法(パーソナライズマーケティング等)が出てきています。また、売上分析や顧客のトレンド分析等も、商品の属性値を軸とした高度な分析を行う企業も出てきています。これらのマーケティングや分析を行う際には、自社で分析対象となるデータを保持している必要があります。そもそも商品マスタに登録されている商品情報が少なければ、それらの施策を行うことが出来ません。
結論として、商品マスタの商品情報登録業務は、①将来に渡って必ず継続的に発生し続ける業務である②DXの基盤となるもの であり、極めて課題解決の重要度の高い領域です。そのため、他領域への新しい取り組みの検討を進めるよりも先に、優先的に商品登録業務における課題解決検討に着手する必要があります。

「商品登録担当者を増やすことが出来ない」「商品登録業務に時間がかかっている」
これらの課題を解決するためには、テクノロジーを活用した観点ではどのようなアプローチが考えられるでしょうか。

課題解決のアプローチ1:RPAによる定型業務自動化

一つ目に考えられることは、RPA(Robotic Process Automation)ツールを活用するアプローチです。商品登録における定型業務を自動化することで、人的な工数を削減し、商品登録業務のリードタイムを短縮できます。RPAは、事前にルールと手順を定めた定型処理作業を自動化することができます。そのため、取引先社数が少なく、毎回決まった手順で商品登録業務を行っている場合は、多くの人的工数を削減し、商品登録業務の時間を短縮することが見込めます。

一方で、RPAにも課題はあります。取引先社数が増えたときや、商品登録業務の手順が変わった際に、一からルールを定め、業務設計・設定を行う必要があります。また、取引先毎に違うルールがある場合、利用と共にルール数が膨大になり、結果的に管理が出来ず煩雑な運用になる可能性があります。そのため、継続的にメンテナンスとルールの管理を行う必要があり、その工数を予め考えておく必要があります。また、それらのメンテナンスにはある程度の業務知識・RPAに関する知識が求められるため、業務が属人的にならないように気を付ける必要があります。

課題解決のアプローチ2:AIによるハイパーオートメーション

もう一つ考えられる別の方法が、AI(Artificial Intelligence)を活用したアプローチです。RPAと同様に、AIで商品登録における業務を自動化することにより、人的な工数を削減し、商品登録業務のリードタイムを短縮できます。

AIの優れている点は、商品登録のルールを定める必要がなく、教師データを用いた学習によって、AIモデル自体がルールを見つけ出していく部分にあります。そのため、取引先社数が増えた場合でも、一定の幅でAIモデルの再利用を行うことが出来、より汎用的な商品登録業務の自動化を実現し、多くの人的工数の削減や、商品登録業務時間を短縮することが出来ます。但し、AIにも課題はあり、AIの課題解決アプローチを行う際は必ず、AIモデルに学習をさせるための教師データを準備する必要があります。しかし、多くの場合既に商品マスタに過去登録している商品の商品属性情報があるため、それらを教師データとして用いて、AIモデルの開発を行う事ができます。

以下の図は、実際に米国大手小売企業のお客様で使われているAIの概要図です。こちらの企業では、ファッションやホームプロダクト・加工食品など複数のカテゴリの商材100万点以上を取り扱っていました。取引先は数百社に渡り、商品登録で読み取るカタログのPDFやExcel、画像等は膨大な数になっていました。結果として、3000人の商品登録担当者が商品登録業務を行っていました。こちらの企業では、複数のAIモデルによる処理を組み合わせたAIソリューションを利用することにより、多くの商品登録業務を自動化することが出来ました。結果として商品登録業務の担当者を50人にまで削減することが出来、商品登録にかかる時間を圧倒的に短縮、大きなビジネスインパクトを生むことに成功しました。商品登録期間を短縮することにより、サプライヤの商品リリース後すぐに商品提供を開始出来るようになったことも大きなメリットです。

このAIソリューションでは、①送られてきた商品情報の分類②カテゴリに応じた属性情報の抽出③抽出した情報を用いた商品付加情報の作成の3つの商品登録業務プロセスの自動化を実現しています。このソリューションでAIが生成した商品マスタデータは、それ以降のパーソナライズマーケティングや需要予測、プロダクトインテリジェンス最適化等に活用されており、DXの基盤となる情報資産として活用されています。

マクニカでは、フルカスタマイズAIサービスCrowdANALYTIXをご提供しており、その一つとして、商品分類・登録を自動化するAIのご提供をしております。

第2回まとめ

  1. 商品登録業務における課題を放置することは、今後のビジネスの大きな足枷となる。
  2. RPAやAIによる課題解決アプローチは、大きなビジネスインパクトをもたらす。

第3回では、AIを使った課題解決アプローチの詳細を見ていきます。

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