DXの軸となるデータ資産を作る! 第1回 商品マスタデータの重要性・課題

小売・卸・EC業界において、商品マスタのデータは、購買機会を創出するための基盤となる情報資産です。商品を訴求しお客様の興味・関心をとらえるためには、お客様にニーズに合う商品情報を効果的に伝える必要があります。そして、そのために使える自社の情報資産(商品マスタデータ)をどのように作っていくかを考えていく必要があります。

購買プロセスの中で、お客様の認知・興味をとらえる過程を分解すると、「商品情報データ」を「何らかの営業・マーケティング施策」でお客様に訴求することによって成り立っていることがわかります。つまり、そもそも使うことが出来る商品情報データの充実度が、その後の工程の営業・マーケティング施策、その先の購買機会の創出に大きな影響を与えることがわかります。逆に考えると、商品の情報を何らかのマーケティング施策によってお客様に訴求する際、その情報元であるデータが充実していなければ、どのようなマーケティング施策を行ったとしても、思ったような効果は見込めないでしょう。

商品点数を増やし、商品情報を充実させることが出来れば、単に直接訴求した際の購買機会の創出のみならず、それらのデータを用いることで、需要予測の精度向上や商品属性別の売上傾向分析、自社ECサイトの検索精度の向上等に活用することが出来ます。

このように、商品マスタのデータはこれからのDXの様々な施策の基盤となる情報資産です。つまり、商品数を効率的に増やし、一つ一つの商品情報を充実させ、データを常に最新の状態に保つ商品登録の仕組みやシステムを構築することは、多くのお客様のDXで優先的に取り組むべき領域です。

現在の商品登録業務における課題

1. 商品登録担当者を増やすことが出来ない

商品登録業務で取り扱う商品の数量や商品属性種類を増やすためには、商品登録担当者に新たに人をアサインし、より多くの人数で業務を行うことが必要です。一方で、人手が足りず、人的リソースの割当が出来ないケースが多いのではないでしょうか。
日本では他国と比較しても急速に少子高齢化が進行しており、生産年齢人口は1995年をピークに毎年減少しています。2020年の生産年齢人口はおよそ7,487万人ですが、2030年には6,773万人にまで減少することが予測されています。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc111110.html

生産年齢人口の減少に伴い、採用活動も年々競争が増し、人材採用が難しくなっています。このような状況の中、商品登録業務への人的リソースの割当はより難しくなり、その結果思うように商品数・商品属性情報を増やしていけなくなることが容易に想定されます。また、人材需要の高まりに伴って人件費も高騰していくことが想定されます。さらに、中小企業においては、大手企業と比べ人材採用がより難しくなるため、現行の商品登録業務の体制を維持することすらも年々難しくなっています。ビジネスを継続的に拡大させていくためには、商品登録業務を抜本的に改革し、テクノロジーを使って効率化・生産性の向上を今から考えていく必要があります。

2. 商品登録業務に時間がかかっている

商品登録業務を実施する担当者には、一定のスキルが求められます。商品登録のプロセスを大まかに分解すると、

①商品情報の収集と分類
②商品情報の読取とデータベースへの商品情報入力
③内容確認・検品・内容修正

の3つのステップがあります。

①商品情報の収集と分類のステップは、取り扱い商品の商品属性情報を様々な方法で収集し、選別するプロセスです。取引先から商品情報が送られてくるケースや、Webサイト等を参照し情報を収集するケース等がありますが、いずれの場合も、商品情報のフォーマットは様々です。

例 商品カタログがPDF形式で送られてくる
例 商品の価格情報が、Excel形式で送られてくる
例 Webサイトを参照し、必要な情報を収集する

異なる情報収集先、異なる商品情報フォーマットを取り扱うには、担当者が実際に手を動かし、商品情報の収集と分類を行う必要があります。1商品あたり3分の作業時間が必要な場合、100商品で300分、10000商品で30000分(500時間)もの工数が必要になります。30000分(500時間)の工数を生み出すためには、約3人の担当者を1ヶ月間本業務のみに割り当てる必要があります(1人月=160時間計算)。もちろん、より短期間で処理を行う場合、割り当てなければいけない週単位の人数は増えていきます。

②商品情報の読取とデータベースへの商品情報入力のステップでは、収集した情報を読み取ってデータベースへの入力を行うプロセスです。収集した商品情報を一つ一つ確認しながら、データベースへ情報の入力を行っていく必要があります。現在、多くの企業では、商品登録業務を担当者が手作業で実施しています。商品情報が載っているテキストファイルやEXCELファイル、カタログ等を目検で確認・内容を理解し、その情報をデータベースに写しかえるといった作業が発生しています。
商品数量が増えれば増えるほど、商品登録業務の工数は増大します。また、商品属性情報を多く登録すればするほど、一商品に対して必要な商品登録業務の工数が必要になります。

例 100商品×10商品属性=1000カラム の情報入力
例 1000商品×10商品属性=10000カラム の情報入力
例 1000商品×30商品属性=30000カラム の情報入力

商品情報の読取・データベースへの商品情報入力業務は、年間を通じて継続的に発生する業務です。また、メーカー品番の変更時期や商品改定時期等、繁忙期は一時的に業務負荷が上がりますが、繁忙期の商品数量に合わせた人的リソースを確保することは、前述の理由でより難しくなっていきます。

③内容確認・検品・内容修正のステップは、入力した情報の整合性をチェックし、間違った商品情報を修正・最終確認を行うプロセスです。データベースに入力された情報を、別の担当者が改めて目検で確認を行い、最終的に作成されたデータの正確性を担保します。このステップに関しても、現在多くの企業では、担当者が手作業で業務を実施しており、商品数量が増えれば増えるほど、商品情報の確認・修正の工数は膨大になります。また、商品属性情報を多く登録すればするほど、一商品に対して必要な商品登録業務の工数が必要になります。

第1回まとめ

  1. 商品マスタのデータは、これからのDXの基盤となる重要な情報資産である。
  2. 商品登録業務に人を割り当てることが年々難しくなる。
  3. 商品数が増えれば増えるほど、商品登録業務に必要な工数が膨大になっていく。

これらの課題をテクノロジーを使うことでどのように解決できるでしょうか?
特集第2回では、これらの課題とテクノロジーによる解決案・実例を見ていきます。

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