OpenText

オープンテキスト

OpenText(旧Hummingbird)- ユーザー事例 - 日本ケイデンス・デザイン・システムズ様

EDAのWindows用エミュレータに
Exceed onDemandを採用した日本ケイデンス。
レスポンス性能とOpenGL対応を高く評価

POINT

  • 複雑な回路の細部まで表現する描画性能とストレスのないレスポンスを両立
  • 3年に渡る協業関係の構築で多くの改善が行われ日本でのサポート力も強化
  • フローティングライセンス方式により運用コストの圧縮が可能に

EDAベンダーと設計パートナーの二面的役割を持つ日本ケイデンス

米国ケイデンス・デザイン・システムズ社(以下、ケイデンス)の日本法人として1989年に活動を開始した日本ケイデンス・デザイン・システムズ社(以下、日本ケイデンス)は、20年以上に渡って国内の大手半導体メーカーや半導体設計企業のEDA(電子回路設計の自動化)を支援してきた。

集積回路の設計や論理合成、検証、解析、ライブラリ/データマネジメントなどに必要なソフトウェア、ハードウェアの開発と販売のほか、最先端の設計ノウハウを活かしたデザインサービスや、設計手法の解析・環境構築をサポートするメソドロジサービス、ツールのトレーニングや教材開発で効率的な設計・開発を支援するエデュケーションサービスも提供するなど、日本ケイデンスはEDAのトータルベンダーという側面と設計パートナー的役割の両面で電子立国日本の今を支えている。

日本ケイデンスでは2009年頃よりWindowsPCからLinuxサーバ上のケイデンス製品を利用できる環境を構築するため、エミュレータの導入を検討していた。

EDAの開発環境は、UNIXサーバとSolarisもしくはLinuxのワークステーションで運用されているのが一般的だが、最近はOA用端末の高性能化と信頼性向上によってデスクトップワークステーションの利用が減少し、Windows環境からサーバやグリッド環境へのアクセスが急増している。

イベントのアンケート調査の結果6割の企業がExceed onDemandを活用中と判明

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社 情報システム部 シニア・マネージャー 渡邊 氏

「当社のグローバル拠点では既にさまざまなエミュレータが使われておりましたが、日本では1本化して運用したいと考えていました。そのため、フリーウェア、シェアウェアを含め10種類ほどの製品を1年かけて情報システム部にて比較、評価しました」と語るのは、日本ケイデンス システム部シニア・マネージャーの渡邊氏だ。

渡邊氏が最も重視したのが、グラフィック性能とレスポンスタイムだった。微細化が進む集積回路では、複雑な回路設計の細部まで正確に表現する描画性能が不可欠であることはもちろん、大容量化する設計データを遠隔地からでもストレスなく操作できることも重要な条件である。

コストメリットからフリーウェアの採用を押す意見はあったものの、更新情報の不確実性と問題発生の際のサポート面の弱さが問題となった。また、ほとんどの製品がOpenGLを利用すると、マウス操作や描画の速度が遅く、微細な配線図が表示されないなど、EDAとして致命的な欠点を持っていたという。

「どれも一長一短で、高品質にデータをハンドリングできるエミュレータはないとあきらめかけていた時、OpenText社(以下、OpenText)製の『Exceed onDemand(以下、EoD)』の存在を知り、急遽評価に加えることにしたのです」と渡邊氏は打ち明ける。

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社 情報システム部 インフラストラクチャー 松井 氏

その結果、グラフィック性能とレスポンス性能は格段に優れていることが判明した。EoDは独自のプロトコル「Thin X Protocol」により、通信トラフィック量を最大100分の1にまで削減。EDAの微細なデータも正確に描画し、低帯域・遠隔地からの利用も可能にする。

また、日本ケイデンスのイベントでアンケートを取った結果、参加企業の約6割が既にEoDを使用している事実も明らかになったという。

さらに、OpenTextは「Cadence ConnectionsProgram」にパートナー企業として参加しており、ケイデンス製品や他のサードパーティツールとの混在環境でも生産性を最大限に発揮できるよう動作や機能の検証を行っていた。「まさに“灯台下暗し”。初めから検討しておけばこんな苦労はしませんでした」と渡邊氏は苦笑する。

日本ケイデンスでは、2010年末に正式にEoDを採用。その1年後の2011年12月にはライセンスの追加導入が行われた。

渡邊氏とともにエミュレータの検証を行った、日本ケイデンス 情報システム部 インフラストラクチャーの松井氏は、EoDの同時接続ユーザによるフローティングライセンス方式のコストメリットと、ライセンスサーバによる効率的な管理の実現を踏まえた上で、「運用開始から2年を経過した時点で、特に問題は発生せず順調に利用されています」とその安定性も高く評価する。

お客様の課題を解決するために今後も積極的な協業関係が必要

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社 テクニカルフィールドオペレーション本部 ミックスシグナル・インプリメンテーション シニアテクニカルセールスマネージャー 浅利 氏

EoDが国内で採用される以前から、日本ケイデンスとマクニカはPC Xサーバ「OpenText Exceed(以下、Exceed)」を始めとした製品の供給で協業関係を築いてきた。EoDの日本語版が開発された2009年頃からは、日本ケイデンスと毎月定例のミーティングを重ね、ツールやライセンスの貸し出し、検証結果報告、問題発生時の解決策などさまざまな情報交換を行っている。また、マクニカのサポートチームにはEoDの日本語版を開発した技術者が在席し直接サポートする体制を取っている。

Exceed/EoDがマーケットシェア6割を占めるので、OpenTextおよびマクニカとの協業が、我々日本ケイデンスの顧客満足度を向上させるためにも非常に重要ではないかと話すのは、日本ケイデンス テクニカルフィールドオペレーション本部 ミックスシグナル・インプリメンテーション シニアテクニカルセールスマネージャーの浅利氏だ。「EoDも当初は表示やパフォーマンスなどの問題を抱えていましたが、3年に渡る協力関係を通じて多くの改善が行われ、日本でのサポート力についても非常に満足しています」

現在は、日本ケイデンスのトレーニングルームに設置した約8割の端末にEoDがインストールされ、お客様の使用状況に近い形でサービスが行われるとともに、国内のアプリケーションエンジニアチームのサポート用インフラにもEoDが活用され、お客様の設計環境を再現することで問題の早期発見に役立てられている。

また、基本性能が高く日本企業の多くが使用しているEoDを、Windows用エミュレータとして採用することに大きな価値があるとして、日本以外のケイデンスの海外拠点でもEoDを活用し始めているという。「情報システム部の最大の使命は、社内ユーザが安心して利用できるソフトウェアを評価し採用する一方で、問題が発生したときも迅速に解決できること」という渡邊氏は、EoDが必要な機能を有し、遅延やトラブルも起こしておらず、バージョンアップも比較的タイムリーに行われていることを認めた上で、マクニカが日本語版を開発したことの重要性を説く。

「多くのソフトウェアがマルチランゲージに対応し始める中、ヘッドクォーター側で言語対応することで、日本人の細やかな要求を吸収できないケースが増えています。しかし、EoDはマクニカが日本語版を開発するため、ローカルのニーズを組み込みやすく、今後も質の高いサポートが期待できそうです」(渡邊氏)

そして、ケイデンス製品の国内販売戦略において、EoDはその存在感を高めつつあると指摘する浅利氏は、ケイデンス製品とEoDとを組み合わせて活用する割合が増えている状況で、お客様の課題を解決するためにより積極的な協業関係の必要性を強調する。

「今後も、お客様サイドで発生している問題やステータスのアップデートなどの情報をマクニカと共有しながら、お客様の立場に立った提案活動を継続していくつもりです」(浅利氏)