ガートナー エンタープライズ アプリケーション&アーキテクチャサミット 2016

2016/03/15(火)

2016年3月15日(火)東京カンファレンスセンター・品川にて開催された「ガートナー エンタープライズアプリケーション&アーキテクチャサミット2016」において、GitHub Enterpriseのご導入企業でいらっしゃいますシンプレクス株式会社 杉浦氏にご登壇いただきました。簡単ではございますが、講演レポートをお送りいたします!

シンプレクス株式会社様(以下、同社)は、1997年の設立以来、一貫して金融機関の収益業務領域に特化し、コンサルティングおよびシステム・ソリューションを展開している企業です。

同社のソリューションは、トレーディングやリスク管理の分野において、国内のほとんどの大手金融機関(メガバンク、大手証券会社、大手信託銀行、大手地方銀行など)で採用されているほか、個人投資家向け取引システムなどのソリューションも、ネット証券やネット銀行を中心に数多く採用されています。

同社は、金融機関に提供するミッションクリティカルなシステムの品質と信頼性確保のため、コンサルティングから開発・導入、運用に至るまで、すべて自社内において一気通貫で行っています。他社製のパッケージのインテグレーションではなく、自社開発のソリューションを展開し、開発においても下請への外注をせず、自社内ですべて行っているそうです。さらに、現在社内に約1,000名の開発者がいる中で、社員自らコーディングを行うことも大事にしているとのことです。

そして、この様に一貫した社内開発を行う上で大きな課題となるのが、“いかに効率的に開発するか”という点だそうです。

上記を踏まえて、同社が抱えている開発環境における課題は大きく分けて3つあるとお話しいただきました。

1つ目は、システムライフサイクルの短縮化への対応です。昨今、金融機関が新しいサービスを金融市場に提供するライフサイクルが非常に短くなっているため、短期間でのIT投資判断と施策の実行が求められるケースが非常に増えています。そのため、同社はお客様に最適なソリューションをいかに短期間で提供できるかを重要な課題のひとつと捉えています。

2つ目は、高い品質要求への対応です。同社は、金融機関の収益業務を担うミッションクリティカルなシステムを提供しています。そのため、“いかに品質を高く保つか”という命題は、同社のみならずお客様の競争力を保っていただくために非常に重要なポイントだと認識しているそうです。同社の考える「品質」とは、「要件定義を正しく行う」「設計を行いドキュメント化する」「テストを全て行う」……こういった当たり前のことはもちろんのこと、「ソースコードの品質をいかに高めるか」を重要なポイントとしています。それは、最終的に本番環境で動作するのはドキュメントやテスト結果ではなく、ソースコードに基づく成果物であるからです。同社では、ソースコードの品質を高めるために、いわゆるコアエンジニア(同社では有識者と呼んでいます)によるレビューを重要施策として位置づけています。同社では、有識者によるソースコードレビューをどれだけしっかり回せるかが課題だとしています。

3つ目は、組織全体における継続的な開発力の向上です。同社では、技術難易度が高いプロジェクトほど、ソースコードレビューの負荷が一部の有識者に集中してしまうそうです。ビジネス規模が急速に拡大している同社では、プロジェクト、ひいては、組織全体における開発力の底上げに向けて、有識者のノウハウやナレッジをいかに容易かつ効果的に社内で共有する仕組みを作るかが課題となっていました。現在同社では、プロジェクトの枠を超えた開発スタイルや運用ルールの標準化にも力を注いでいるとのことです。

次に、なぜGitHub Enterpriseを選択し、導入したかをお話しいただきました。その理由は3つあるとのことです。

1つ目は、有識者がソースコードレビューを効率的に実施できる環境を用意するためです。実は、このことは同社の長年の課題でした。同社はこの課題に対してGitHub Enterpriseを導入する以前より、静的解析ツールを用いることで、ソースコードレビューを人間が出来るものとシステムが出来るものとに分類し、人間がレビューしないといけない量を減らしていました。このツールが社内に普及したため、次のステップとして、ソースコードレビューのプロセスを効率的に行うための検討を始め、GitHub Enterpriseを導入しました。選定の一番のポイントは、 GitHub社が発明した“プルリクエスト”の仕組みです。広く使われているSVN(Subversion)やCVSはそもそもソースコードレビューを行うための機能がありません。またSVNやCVSでソースコードレビューを行う場合には一度コミットする必要があることに加え、却下するにもソースコードを戻して……という手間がかかってしまうことがネックでした。GitHub Enterpriseでは開発者が手軽にブランチを作り、他の開発者の修正と混ざらないブランチで作業を行い、プルリクエストという形で有識者が差分のレビューを行うことができます。有識者がプルリクエストでOKとしたものだけをマスターのソースコードにマージできるため、より効率性が上がるようになりました。GitHub Enterpriseが提供する自然な流れでレビューを行う事ができ、レビューでのやり取りも記録として検索可能な状態で残す事が出来ます。

2つ目は、GitHub Enterpriseのブランディング効果です。GitHubはITエンジニアを採用する上でブランディング効果があると言われています。これは、GitHubで開発すること自体が先進的技術に取り組んでいる会社だと認識されていることに起因するそうです。転職サイトの検索条件に「プルリクエスト機能でコードレビューを行っている」「GitHubを導入して開発を効率化している」といった企業の取組が入っていることもあり、ブランディング効果が見込めると認識しています。同社も、「いかに優秀な技術者を社内で育てるか」「外部から採用するか」ということを考える際に、GitHub Enterpriseを導入・活用していることによるブランディング効果を期待しているそうです。

3つ目は、導入後の充実したサポート体制です。GitHub Enterpriseは国外で開発されたソフトウェアなので、日本語での信頼できるサポートがないと導入が難しいと思っていたそうです。2015年6月にマクニカが日本国内でのGitHub Enterpriseの総代理店になったので、導入するに至ったとのことです。

同社は、現時点では、特定のプロジェクトでの利用を進めています。今後の新規開発プロジェクトは、基本的にGitHub Enterpriseに移行していく予定とのことです。利用している開発者からは「GitHub Enterpriseを導入したことで、大規模プロジェクトにおいても、ソースコードレビューを100%やり切ることができた」「限られた有識者によるソースコードレビューの過程や結果を、GitHub Enterprise上でプロジェクトメンバー全員が共有できるようになり、各開発者のノウハウやナレッジの底上げにつながった」「14人いるプロジェクトメンバーから、5人がレビュアーにステップアップするなど、レビューされる側からレビューする側へ役割委譲の促進を図ることができた」という成果も出たそうです。このプロジェクトではGitHub Enterpriseを導入した効果が非常に高かったそうです。

最後に、ROIについてお話しいただきました。

杉浦氏は「開発者に効率的かつ気持ち良くソースコードを書いてもらうための環境を用意する際に、ROIを引き合いに出して導入判断することは極めて難しい」とその考えを語っていただきました。
同社はROIを引き合いに出すことなく、GitHub Enterpriseの導入を決定したそうです。また、GitHub Enterpriseを利用することで一定の成果をあげているプロジェクトにおいても、ツール導入後の費用対効果を定量的に測ることは難しいとも感じているそうです。

このイベントに来場されている方々も、日本の技術者の底上げのためにも、より良い開発環境を“経営サイドが用意することの大切さ”を理解している方々だと思います。定量化が難しいROIにとらわれることなく、検討を進めてみてはいかがでしょうか?とお話しいただいて、講演を締めくくりました。

杉浦様、その節はご登壇いただきまして誠に有難うございました。改めてこの場をお借りして御礼申し上げます。

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