

ANAインターコンチネンタルホテル東京が、世界に4400を超えるホテルを展開するインターコンチネンタルホテルズグループの一員として加わったのは、2007年のこと。同ホテルグループにあっても、インターコンチネンタルの名を冠することができるのは、一定のサービス要件を満たしているホテルのみ。ハイレベルなサービスを各国で受けられるとあり、世界を飛び回るトップビジネスマンからも多く愛用されている。ANAインターコンチネンタルホテル東京 IT支配人 新井 健二郎氏は、ホテルに訪れた変化について次のように語る。
「全日空ホテルズからインターコンチネンタルホテルズグループへと代わり、海外からのお客様が増えました。それに伴い、お客様のインターネット利用にも変化が見られました。特に多くなったのは、Skypeを含むVoIP接続と、VPN接続です」
実はインターコンチネンタルホテルズグループに加盟する以前、全日空ホテルズ時代から、客室向けインターネット接続サービスの見直しが課題となっていた。当初課題視されていたのは、VoIPとP2Pソフトの利用だった。客室と宴会場などゲスト向けに100Mbpsのインターネット回線を用意していたが、一部の宿泊客が多くの帯域を占有し、他の宿泊客の利便性を阻害する事態を招いていた。そのための対策は、全日空ホテルズに加盟していた当時から模索されていたと新井氏は言う。
「一部のお客様が帯域を占有してしまい、TV会議がつながらない、インターネット接続が遅いなどの苦情が聞かれることは、当時からありました。そこで、客室向けインターネット接続サービスの品質を向上させるため、帯域管理を行なうべきだという指針が上層部では示されていました。そこで推奨されていたのが、ブルーコートシステムズのPacketShaperでした」
帯域制御製品を選定するに当たり、最も注目したのは動的な帯域割り当て機能の有無だった。
「ホテルでは、お客様の数や、その方々のインターネット利用の動向は日々変化します。利用者を特定できるオフィスとは違い、固定的に帯域を割り当てる方法では管理できないので、動的な帯域割り当ては欠かせない機能です。PacketShaperの他にもいくつかの製品について情報収集を行ないましたが、同様の機能を持つ製品は見つかりませんでした」
選定要件について、ANAインターコンチネンタルホテル東京 IT担当 増田 博史氏はそう語った。
PacketShaperには、帯域を動的に割り当てるダイナミックパーティションが備わっていた。ユーザや端末に固定的に帯域を割り当てることなく、状況に応じて各ユーザに帯域を割り当て、管理できる機能だ。同じく100Mbpsの回線を例にとれば、利用者が100名のときには各ユーザに1Mbpsを割り当て、10名のときには各ユーザに10Mbpsを割り当てることができる。

マクニカネットワークスの支援により、系列ホテルであるストリングスホテル東京インターコンチネンタルにPacketShaperを設置して約2ヵ月間の実地検証も行なわれた。ダイナミックパーティションが期待通り動作し、P2PやVoIPの帯域コントロールに効果があることを確認したうえで、導入の最終決定が下された。
2010年11月、実際にANAインターコンチネンタルホテル東京の客室向けインターネット回線にPacketShaperが導入された。ダイナミックパーティションを使って設定を行ない、インターネット接続の帯域を各ユーザに動的に割り当てている。約800室ある客室に加え、宴会場も同じネットワークに接続されている。新井氏は導入されたPacketShaperについて、次のように語る。「帯域を動的に管理できるダイナミックパーティションがあったからこそ、帯域管理を始められました。PacketShaper導入後は一部のお客様が多くの帯域を占有することがなくなり、客室向けインターネット接続サービスの安定性も向上しています」導入以前は、インターネット接続に関して客室から苦情があるたびに、ネットワーク側の調整を行なうためにSIerに問合せを行なっていた。しかしPacketShaper導入以後は、問合せを要するようなネットワーク側の問題は一切なくなったという。インターネット回線やネットワーク機器の変更は行なっておらず、安定性向上はPacketShaperのおかげだと、新井氏は確信しているという。

ネットワークの安定性向上だけではなく、ネットワークの利用状況を可視化できたこともPacketShaperのもたらした大きな効果だと、増田氏は言う。
「AutoDiscoveryを備えたリアルタイムモニタリング機能により、ネットワーク上のアプリケーションの利用状況を把握できるようになりました。これまで課題とされていたP2PやVoIPトラフィックが他の利用者の帯域を圧迫していないことが確認できています」
AutoDiscoveryは、700種類以上のアプリケーションを自動判別し、利用状況を詳細に可視化する機能だ。個別に設定することなく詳細なモニタリングが可能なので、ネットワークの利用の実態を把握できるようになった。どのようなアプリケーションがどの程度使われているのか、ネットワーク全体の帯域は足りているのかなどの分析を行なうことで、今後のサービス向上につなげられるのではないかと新井氏は期待している。


「ホテルマンは、お客様から何かができないと言われるのが最も辛いのです。どうすればお客様のご要望をかなえることができるのか、模索し続けなければなりません。そのためには、現状を的確に把握する必要があります。これまでは感覚的な判断でネットワークへの投資を行なったり、トラブルが発生して初めてお客様の実際の利用方法を知ったりということがありました。今後は実地に基づいた判断で、サービス向上に直結する投資ができるでしょう」
新井氏はさらに、スマートフォンやタブレット端末についても言及した。これらの端末の急速な普及が、ネットワーク利用に大きな変化をもたらす可能性がある。こうした変化に対応するためにも、ネットワークの利用実態を把握し、変化から顧客ニーズを理解する必要がある。的確な分析に基づいてネットワーク増強などを行なうことで、顧客満足度を高められる。
PacketShaperによるネットワーク安定化の効果を実感し、利用状況の可視化によりサービス向上のための分析も可能になったANAインターコンチネンタルホテル東京。「インターネット接続はホテルに欠かせないサービスであり、その品質を向上させるためにPacketShaperが大きな役割を担ってくれることがわかりました。この効果をグループ内の他のホテルにもフィードバックすることで、サービスの品質向上につなげていければと期待しています」と新井氏は言う。その言葉からは、より良いサービスを宿泊客に提供したいというホテルマンの想いが伝わってきた。PacketShaperによりネットワークの安定性が増し、利用状況の可視化が可能になったことで、より高品質なサービス実現に向けてANAインターコンチネンタルホテル東京は進んで行くだろう。
| ANAインターコンチネンタルホテル東京 | ||
|---|---|---|
| 導入時期 | 2010年11月 | ![]() |
| 所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂1-12-33 | |
| URL | http://www.anaintercontinental-tokyo.jp/ | |
| 事業概要 | ホテルの運営、経営 | |
ANAインターコンチネンタルホテル東京は、インターコンチネンタルホテルズグループの中でも高いグレードを誇るホテルのひとつ。都内各地にアクセスのいい都心に位置し、地上37階、地下3階の建物に844の客室、11のレストラン・バーを備える。トップビジネスマンを支える一方、ショッピングアーケードやガーデンプールなど施設の充実したリゾート空間としての顔も併せ持つ。